フランスの冷凍食品専門店『Picard(ピカール)』が華々しく日本上陸をとげたのは約3年前。その所在地はといえば青山、代官山、麻布十番に中目黒……誰もが憧れるオシャレタウンばかりである。必然的にピカールに対して “オシャレ” “高級” というイメージを持つのだが……。

実際に本場・フランスへ行ってみると、ピカールがあるのは決してオシャレなエリアばかりではない。むしろ「八百屋、クリーニング屋、ピカール」といったふうに、さりげなく生活圏内に存在している感じだ。

聞けば日本に比べて値段もかなりリーズナブルらしい。軽い気持ちで入店してみたところ……日本では絶対にありえない商品を発見してしまったぞ!

・パリのピカール

パリ中心部には、東京でいう『まいばすけっと』くらいの頻度でピカールが点在している。入店すると店員の姿が見当たらず一瞬「無人スーパーかな」と慌てた(レジにはちゃんとおられました)。

考えてみれば冷凍食品の専門店なのだから、鮮度や期限をこまめにチェックする必要はないワケだ。必要なのは冷凍ケースのみ。冷凍食品を利用するメリットは便利さだけでなく、人手不足解消や食品ロス削減にも繋がっているのだなァ。

広いピカール店内は食品の種類ごとにキチンとコーナーが分けられている。冷凍野菜コーナーはほぼ全ての野菜が揃っているのではと思うほとの充実ぶり。

料理名の分からぬオシャレな商品が多数。

弁当状になっているものも多く、これほどオシャレなら冷凍食品でランチを済ませても侘(わび)しくなさそうだ。

調理済みのカキやエスカルゴに……

ビーフステーキ……

果ては高級食材のフォアグラまで! さすがフランス!


・その発想はなかった

「冷凍食品でお安くフランス料理を食べよう」そう考え店内を物色していた私が、最終的に購入したのは当初の予想と全く異なる商品だった。それは……


寿司である。


わざわざパリへ来といて寿司……それも冷凍食品の寿司を私が購入した理由は2つ。『好奇心』それから『フランスの人に対する感謝の気持ち』だ。

私がこれを見つけたピカールは19区に位置しており、パリ中心地とはいってもエッフェル塔まで歩けば2時間ほどかかるエリア。 “パリど真ん中” とは言えないこの場所にすら『冷凍寿司』が山積みされているということは、それなりに売れているとみて間違いないのだろう。

……ってことは「 “冷凍でもいいから食べたい” ほど寿司好きのフランス人が多い」という仮説が成り立つワケである。日本人としてこれほど嬉しいことが他にあるだろうか? せっかく来たなら食べてみるのが礼儀というものだ。

価格は8.5ユーロ(約1021円)。他のピカール商品の相場と比べて安くはないが、箱を開ければ割り箸とわさび、ガリまで入った本格派だ。しかも醤油はキッチリ魚型の容器で! 嬉しいねぇ。

ところで肝心の寿司はカッチカチに凍っており、容器にくっついてしまっている。

ネタのサーモンが “冷凍焼け” しているようにも見える。

エビはカピカピなようにも見える。

全体的に「けっこうマズそう」にも見えるが……とりあえず食べてみないとね!


・待つこと4時間

パッケージのフランス語を解読してみると、冷凍寿司を解凍する方法は「750ワットの電子レンジで1分30秒加熱したのち冷蔵庫で15分冷やす」もしくは「冷蔵庫に4時間放置」の2パターンらしい。

750ワット……日本の標準的な電子レンジの設定に照らすと、かなり高いワット数だ。冷凍とはいえ生モノである寿司を加熱することには若干抵抗があり、私は無難に「冷蔵庫で放置」を選択。そして4時間後に取り出した寿司は…………



ちょっとおいしそうになってる!!!


冷凍とは思えぬ刺身感! 高級寿司店とはいかないまでも、見た目は “スーパーの寿司” くらいに進化したぞ! さすがピカーーーール!


・「ウマさ」の定義とは?

期待を込めて食した冷凍寿司の味を、私は記者として皆様に、できるだけ正確にお伝えしたいと思う。まず、あなたが『冷凍の寿司』と聞いたとき、どんな味をイメージするだろう? 「えっ、何それ絶対マズそうだけど……?」と、疑いの気持ちを持つのではないだろうか?

しかしその後、こうも考えるだろう。「でも、商品として売られているワケだから、食べられないほど激マズってことはないわよね? だからといって……冷凍のネタってなんとなくビチャビチャしていそう。シャリはパサパサでボソボソな気もするけど……?」

そう……それこそが、まさに冷凍寿司の味そのもの。 “冷凍寿司” と聞いた日本人が「せいぜいこのくらいの味では?」とイメージする味、そのまんまだと思っていただければかなり近いのではないかと、個人的には思う。

この寿司が仮に日本で売られていたとしたなら、私を含む多くの日本人は「マズい」と切り捨てるだろう。しかし冷凍というハードルを乗り越えている点、さらに開発したのがフランスの会社である点を加味すると……「がんばった」と言えなくない気もするんだよな。


う〜〜〜む、これは難しいところである。そこまでして寿司、食べたいかなァ……?


・プロに聞いてみた

と、いうわけでこの件に関し、当サイト所属の冷凍食品研究家・レンチン原田の見解をきいてみることにした。冷凍寿司はこの先さらにウマくなるのか? そして日本でもブレイクするのだろうか?



レンチン原田「そうですねぇ。冷凍寿司の将来性についてですが、日本に限ってはあまりないような気がします。ご存じのように、日本だとリーズナブルで美味しい寿司を提供する店がたくさんあるからです。

ただ、寿司店がまだ少ない海外だと可能性はあるかもしれません。最近、健康的な日本食のブームが来ているようなので、 “味は二の次” という部分もあるのカモ? 外国人だと食べ慣れていないから、日本人ほど舌が肥えていないでしょうしネ。

そして今後ウマくなるかという点。こちらに関しては “ある” と思いマス! 正直、今の冷凍寿司は美味しいとは言えないものが多いですが、常識は非常識の中から生まれるもの。技術の進歩によって、握りたての味が再現される日がいつか来る……カモですネ☆」


・がんばれ冷凍寿司

冷凍寿司は未だ発展途上。それは言い換えれば「伸びしろがある」という意味に他ならない。仮に日本の寿司を冷凍で海外へ空輸できたなら? 我が国にとっても大きなビジネスチャンスとなることだろう。

海外でこれほど熱烈に支持されている寿司。日本人としては外国の方に、もっと寿司本来のおいしさを知ってもらいたい。1日も早い冷凍技術のさらなる進化が待たれる!

参照元:ピカール公式サイト
Report:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.