ある一報を受け取ってからというもの、手の震えがとまらない。90年代にNHKで放送された伝説のアニメ『おにいさまへ…』が全話無料配信されているというのだ!

『ベルサイユのばら』の池田理代子先生の同名の漫画をアニメ化した同作。公式サイトに「その衝撃的な内容は当時地上波ではまず考えられない」と言わしめたあの作品がYouTubeに帰ってきたぞーッ!

・『おにいさまへ…』が伝説である理由1「世界観が激ヤバい」

『おにいさまへ…』が視聴できるのは、YouTubeの手塚プロダクション公式チャンネルだ。2019年11月8日より配信開始。月~金に毎日1話ずつ公開されており、12月4日現在、全39話中11話までが公開されている。

配信スタートから少し日は経ってしまったが、“おにいさまへ友” から連絡を受け、ファンとしてこれは世界中にお伝えせねば……という謎の使命感を覚えてしまった。ということでまずはあらすじを紹介させてほしい。


「私立青蘭学園高等部の入学した主人公の御苑生奈々子(みそのお・ななこ)。青蘭学園には『ソロリティ』と呼ばれる “選ばれた者” だけが入ることが許される社交クラブが存在した。

ソロリティメンバーズは良家の令嬢や容姿端麗な生徒ばかり。 “庶民の子” である奈々子は自分には縁のない世界だと思っていたが、なぜか『ソロリティ』の候補者に選ばれてしまう。後に、奈々子のソロリティ入りの裏では学園の女王的存在・宮さまこと一宮蕗子(いちのみや・ふきこ)が動いていたことがわかる。そこには奈々子の知らない愛と憎しみが渦巻いていた……。」


こんな舞台設定だけでも心ときめくが、ドロドロなストーリーを華やかにしてくれるのが華麗な登場人物だ。『おにいさまへ…』には宝塚の男役のような麗人キャラが2人登場する。「薫の君」と「サン・ジュスト」だ。

本名ではなく彼女らを慕う女子生徒がつけた愛称なのだが、その由来がヤバい。薫の君は『源氏物語』に登場する右大将・薫の君から。そして「サン・ジュスト」はフランス革命でロベスピエールの右腕として活動し、その美貌と冷徹さから「死の天使長」と呼ばれた「ルイ・アントワーヌ・ド・サン=ジュスト」から、その名がとられているのだ。


ストーリーは奈々子、宮さま、薫の君、サン・ジュスト、そして奈々子のクラスメイトでソロリティメンバーのひとり信夫マリ子(しのぶ・まりこ)を中心に進む。なかなかエキセントリックな世界観ではあるが、それだけに愛情、同情、憎しみ、嫉妬など人の持つあらゆる感情が際立ち、その渦に視聴者は引き込まれてしまうだろう。

・伝説な理由2「声優が胸アツ」

さてストーリーもなかなかすごいが、アニメ版は声優陣が豪華なことでも知られる。たとえば、薫の君は戸田恵子さん、サン・ジュストには島本須美さん、そして宮さまには小山茉美さんなどなど……! 詳しい方ならハッとするはず。

戸田恵子さんと言えばアンパンマン、島本須美さんはナウシカやしょくぱんまんを演じている。そして小山茉美さんと言えば『Dr.スランプ』のアラレちゃんじゃないか!

女子高を舞台に、アンパンマンとしょくぱんまんがタカラヅカのように華麗にかけあい、たまにアラレちゃんが絡んでくるという……そんな妄想もはかどる作品である。

・伝説な理由3「劇画、まさに劇画」

そしてアニメで印象的なのが演出だ。重要なシーンで「シャキーン……ッ」と効果音と共に画面が劇画タッチの絵にさしかわる「止め絵」という技法が多用されているのである。たとえるなら『あしたのジョー』や『エースねらえ!』を想起されるあの演出だ。

それもそのはず。『おにいさまへ…』の監督は、『あしたのジョー』や『エースねらえ!』の製作にも関わった出崎統(でざき・おさむ)監督なのである。

私(沢井)は90年代後半に見たのだが、90年代のクリアで滑らかなアニメーションのなかに突如登場する「止め絵」のインパクトは一周回って新鮮、そして強烈。アニメ版『おにいさまへ…』ファンは必ずこの止め絵のことを話すくらい印象深い演出なのだ。これから見るという人は、ぜひ目に焼き付けてほしい。

・配信は2020年1月21日まで

そんな『おにいさまへ…』の配信は、無期限ではなく期間限定。といっても2020年1月21日14時までと比較的長期である。ヨカッタ……! もう正月休みは『おにいさまへ……』一気見で決定だ。ちなみにだがアニメ版は原作とは異なるラストを迎えるので、両方を比較しながら見るとより楽しめるだろう。

それにしてもこの21世紀に『おにいさまへ…』を再び見ることができるなんて、なんと幸せなことか。胸アツすぎて……おにいさま……涙が、止まりません……。

参照元:手塚治虫公式サイト『おにいさまへ…』YouTube
執筆:沢井メグ
Photo:Rocketnews24.

▼こちらが第1話! 第1話は無期限で配信されるそう

▼原作は文庫で全2巻。うちの1巻のカバーは子供にグチャグチャにされてしまったよ。こちらも涙が止まりません……。

▼手塚プロダクション公式チャンネルで同じく出崎監督の映画『ブラック・ジャック』も配信! 太っ腹すぎやろ!!