それは15年前、私(中澤)が22歳の時のことです。大学卒業を間近に控え、社会に出ることに対して漠然と不安を抱いていた私。仲の良かったフリーターの先輩Aさんの家に入り浸っては、ひと晩中ゲームや音楽の話をして不安を紛らわす日々を送っていました。

そんなダラダラにも飽きたある夜のこと。いつも音楽の話ばかりしているAさんが、一風変わった話題を振ってきました

──「お前、小説は読むか?」

私もバンドマン、Aさんもバンドマン。小説の話をしたのはその時が最初で最後だったと思います。

ただ、マンガとアニメで育った私。ラノベなら読んだことがありますが、文学的な小説は国語の教科書に載ってるものくらいの認識しかなく、当時は自主的に読んだことはありませんでした。

Aさんはアニメとか見ないので、おそらく文学的な方の小説のことを言っているのだと思われます。しかし、「読んだことがない」と答えるのはなんか恥ずかしい。そこで私はこう答えました。


「結構読みますよ(ラノベを)」と──。


すると、「お前はなんか読んでそうな気がした」と微笑むAさん。「実は面白い小説を見つけてな」と続けます。そして、本棚から1冊の文庫を抜きコタツの上に置きました。表紙に焦点の定まらない目ではだけた女性が描かれているその本。左上には『夢野久作 ドグラ・マグラ』と書かれています。

オイオイ、なんか強烈なの出てきたな。でも、これ読まなきゃいけない流れじゃね? そう思った私は返す刀でこう答えました。


マママ、マジっすか!?」


私はAさんを尊敬していました。バンドマンで楽器もウマイAさんみたいになりたいなあと憧れていました。すなわち、Aさんのオススメは正義! Aさんが好きなものは間違いねェ!!

そんなAさんいわく『ドグラ・マグラ』は、日本三大奇書の1つで「読み切ると精神に異常をきたす」と言われているのだとか。Aさんにそう言われて興味が湧いてきた私。さっそく本を借りて帰って読んでみたところ……


辛い……orz


とにかく読んでてしんどい。痛いほどにしんどい。まるで文字で嫌がらせされてるみたい。ミステリーで探偵役が狂人ってどういうことだよ……本の中で論文読むのしんどい……いくらなんでもチャカポコチャカポコ言いすぎだろ……。

正直、読んでられなかったんですけど、Aさんに薦められたものを途中でやめるのが嫌だったため、意地だけで読了しました。これが面白いとかAさんは狂ってるんじゃないだろうか。あ、『ドグラ・マグラ』を読んだからかも

そして、本作は、私が初めて読了した文学小説です。ロケットニュース24のライターになってしまったのも『ドグラ・マグラ』読んだからかも。

なんと、そんな『ドグラ・マグラ』をメール配信するキャンペーンが始まるそうです。誰得だよォォォオオオ!?

読書サポートサービス「ブンゴウメール」で、2020年1月1日から「ドグラ・マグラ365日配信チャレンジ」が開始されるとのこと。『ドグラ・マグラ』が約1000文字程度ずつメール配信されるこのキャンペーン。「ブンゴウメール」は無料で登録できるサービスですが、はたして登録者数は増えるのか?

っていうか、1年間毎日『ドグラ・マグラ』が送られてくるとか何の嫌がらせだよ……。まさに、最後まで読みきると精神に異常をきたすメールと言えるでしょう。

参照元:ブンゴウメール
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.