世界中にゾンビブームを巻き起こした大ヒット海外ドラマ『ウォーキング・デッド』。ここ数年、アメリカで視聴率が下降気味で勢いが衰えている感は否めない。

そんななか、2015年に米国で放送開始したスピンオフ『フィアー・ザ・ウォーキング・デッド(以下『フィアー』)』がドンドン面白くなってきている。なぜなのか、ここではその理由を5つ挙げてみたい。

1. スピンオフは世紀末的な世界の始まりを垣間見られる

『ウォーキング・デッド』は、すでに最初からウォーカーの存在が当たり前になっていて、人々がサバイバル生活を送ってしばらく経つ……との設定で始まった。ところが前日譚にあたる『フィアー』は、主要登場人物が初ウォーカーだと思われる人物を目撃したり、いかにウォーカーのアウトブレイクが広まったかが描かれていて興味深い。

それに、豊かな文明に慣れきっていた現代人がライフラインを失い、いかに不便かつ危険な環境に適応していくかという過程は『ウォーキング・デッド』に登場しないため、引き付けられてしまうのだ。


2. 本家とスピンオフのクロスオーバーの仕方が最高!

そして、あれだけ「本家とスピンオフをクロスオーバーさせるつもりはない」と言っていたシリーズのクリエイターで原作者のロバート・カークマンが、ついに両シリーズのクロスオーバーを決断!

一体、誰がクロスオーバーの中心になるのか大きな話題となっていたのだが、それは本家に登場していた “あの人” である。ネタバレを避けるためにあえて名前は出さないが、その人物の登場の仕方もファンがアレコレと考えて放送前から盛り上がっていた。

ところがファンの予想を裏切るかのごとく、裏の裏をかく形で現れたことで唖然! その描かれ方は、「まったく捻(ひね)りがなくて逆に斬新だった」と言っておこう。


3. 本家より登場人物が少ないのがイイ

とにかく、『ウォーキング・デッド』は登場人物が多すぎる。最近はアレキサンドリアや救世主、ヒルトップなど、主要キャラ以外に次から次へと新しいキャラクターが登場し、誰が誰だか分からなくなることも少なくない。

そして登場人物が多くなると、どうしてもキャラクターの描かれ方が中途半端になりがちとなる。だが、スピンオフはアンサンブル構成ではあるものの、本家に比べたら登場人物が少ない。よってキャラクター描写が丁寧なため感情移入しやすいし、「物語の厚みを欠く」という現象も回避できていると思う。


4. シーズン4の新キャラクターが新鮮

両シリーズとも、世紀末的な世界で生き残りをかけてサバイバルを繰り広げるストーリーだけに、どうしても略奪や闘争、殺人などがテーマとなり作品のトーンが重くなってしまう。

そのストーリー展開に合わせて登場人物も陰謀や裏切り行為を繰り返し、見ている方はちょっと心が疲れてきてしまうこともある。ただ、『フィアー』シーズン4に初登場するジョンは、キラリと光る個性でシリーズの清涼剤的な存在となる。

彼は今まで両シリーズで描かれたことがないようなキャラクター。“ある女性” と出会った背景が語られる複数のエピソードは、引き込まれずにいられなかった。そんな彼に心を動かされ、本家から移ってきた一匹狼の〇〇が「ジョンと一緒に行動をしよう」と思ったのも納得してしまった。


5. 前後するタイムラインの描かれ方が絶妙!

『ウォーキング・デッド』にも、少なからずタイムジャンプやフラッシュバックは挿入されていたが、『フィアー』シーズン4で導入された前後するタイムラインの描き方に比べたら、本家は比較にもならない。

シーズン4の過去シーンはセピア色、現在シーンはブルーがかったダークなトーンで撮影されている。そんな過去と現在を交互に描くことで、どれだけキャラクターに変化が起きているのかを明確かつ丹念に描写しているのだ。

よって見る側のキャラクターへの感情移入度が格段にアップし、「『フィアー』よ。ドンドン本家よりも面白くなってるじゃん!」と思わずにはいられなくなってしまう。


『フィアー』はAmazonプライムでシーズン1から4の前半まで配信中。『ウォーキング・デッド』シーズン9は、FOXチャンネルにて10月8日より放送がスタートする。本家は新シーズンで下降気味の視聴率と人気を回復できるのか、そういった点にも注目していきたいと思う。

参照元:Instagram @feartwd
執筆:Nekolas

▼『フィアー・ザ・ウォーキング・デッド』シーズン3の予告編

▼『ウォーキング・デッド』シーズン9の予告編