突然だが、私はニオイに超敏感なほうだ。鼻が異常に利きすぎるのか、単なるニオイだけではなく、男女が発する特定のフェロモンらしき香り(※体臭やワキガ等ではない)も嗅ぎ取ってしまうことがある。たとえば電車に乗っている時。かなり遠くの方にいても、むこうのドアから「あ、乗ってきたな」と分かるくらいに。

そんな私の部屋には、数十匹の熱帯魚(プラティ)が入った水槽が置かれているのだが、ある時から突然、病的にニオイが気になり始めてしまったのだ。

きっかけは、大掛かりな掃除をした直後から。フィルタも新品。できるかぎり洗った砂からは若干のニオイが漂っているが、新たな水を入れたら汚れもニオイも薄まるし、バクテリアが育ってきたらキレイ&無臭になるだろう。これまでは、そうだった。


ところが……


数週間してもビミョーにクサい……気がする。そこはかとなく生臭い。よって、水槽の裏側に「無香空間」的なビーズ脱臭剤を3連発で設置したり……

水槽横に「消臭元」的な消臭剤&芳香剤を3連発で設置したり……

電池式の小型消臭器を2連発で設置したり……

──といった万全すぎる消臭設備はこれまで通りなのだが、なぜか今回に限っては、それでもクサい……ような気がするのだ。

今にして思えば完全に、実際はクサくないのにクサく感じてしまう「クサいかもしれないノイローゼ(羽鳥命名)」を発症していたと思われるが、水面ギリギリをクンクンして「クサい……まだクサいっ!」と1人ワーワー騒いでいたのだ。

冷静に考えれば、生きている魚が数十匹も泳いでいる水が無臭なわけがない。わかりやすく言うならば、顔面スレスレの超至近距離で自分のウンコをクンクンして「クサい!」と言ってるようなものでクサくて当然。しかし私の「クサいかもしれないメーター」はレッドゾーンを振り切ったままだった。


その後、私は「オゾンも発生する空気清浄機」を購入した。格安な小型のタイプだが、少しでもニオイが消えれば……と思って設置した。しかし……


だめだ。まだクサい……気がする!


ちなみにオゾンは特徴的なニオイがする。人によって感じ方は異なると思うが、そこはかとなく「生臭い」香りがする。水槽の生臭さをクサいと感じながら、生臭い香りを発生するオゾン発生器を増設して「まだクサい……」と言っているのだ。自分のことながら、はっきり言って頭がおかしい。


その後、私は8000円ほどの空気清浄機を購入した。部屋用ではなく、完全に「水槽のまわりの空気を綺麗にする用」として設置した。しかし……


だめだ。まだクサい……気がする!


その後、私は、もとから持っていた電池式消臭器のパワーアップ版(大型かつACアダプタで動く!)を購入した。これで絶対に大丈夫なはず……と設置した。しかし……


だめだ! まだクサい気がする!! 絶対クサい! クサいクサいクサ〜いっ!!


最終的には、「USB式のオゾン発生器」なる商品をダブルで設置し、やっとこさニオイが気にならなくなった……ような気もするのだが、もしかしたら実は何も変わっていないのかも知れないし、もうなんだかワケがわからなくなっている。


そういえば中学生のころ、思春期だからなのか、やたらと自分のニオイが気になる時期があった。

登校前、家でウンコしただけで「もしや、オレ、ウンコ臭くなった……!?」と思い込み、まるで燻製マシンのごとくトイレ内で お香を炊きまくって、学ランに お香の香りを染み付けていたりもした。下手すりゃ死んでいたかもしれないが、とにかくウンコ臭を消したかったのだ。

あるとき、隣りの席に座っていたクラスの女子が目をウルウルさせながら私にこう助言してくれた。もしや告白……と一瞬は期待したが、


「羽鳥くん、今日のお香のニオイ、ちょっとスゴすぎてキツい。目に染みるほどだよ」


──今にして思えば、「目に染みるほどの お香臭を漂わせる学ランを着た中学生」とは並のサドゥー(修行者)ではないな……と思ったりもするが、その時もまた、完全にワケがわからなくなっていた。


あの頃と、また同じことをしている気がする。もしかしたら私はニオイに敏感どころか鈍感で、「クサいかもしれないノイローゼ」どころか「実際にクサい」のかも知れないが、とにかく今でも水槽のニオイ問題は完全解決していない。

私は今、思春期なのかもしれない。

執筆:GO羽鳥
Photo:RocketNews24.