Netflix(ネットフリックス)で独占配信中の『サクッと揚げたて! フライ天国』が最高にイカしている。番組の全貌はこうだ。大柄なアメリカ人男性デイム・ドロップスが全米各地でファストフードを食べまくる……ただそれだけ。フリーダムにも程があるな。

かといって『フライ天国』は俗に言う「飯テロ」といった類のものとは少し違う。なぜなら息をもつかせぬジャンクフードの連発に、中年の私などは見ているだけで「ウップス……」となる場面も多数。空腹時にコレを見たら、逆に食欲が失せる気すらする。

にもかかわらず最終的に私は「アメリカ人に生まれたかった」と悔しみの涙を流したのだから、デイムの食レポは相当魅力的ということだ。ここでは『フライ天国』がいかにグルメ番組の常識を無視しているかについて「サクッと」ご紹介したい。

・その①肝心な情報を無視

まずデイム・ドロップスの肩書きは「料理評論家」なのだが、それにしては好き嫌いが激しすぎる。番組内で堂々と「野菜嫌い」を公言しており、ハンバーガーに挟むトマトやレタスまで勝手に抜いてしまう始末なのだ。おそらく料理の鉄人たちが聞いたら卒倒するであろう。

ちなみに記者もグルメ記事を執筆することがあるが、その際もっとも重要視するポイントは「読者(視聴者)に有益な情報をお伝えする」ということ。どこで売っているか、価格はいくらか、一般的な味の評価はどうか、レシピは分量まで詳細に、などなど……。

しかし『フライ天国』の制作陣は、視聴者にそういった情報を届ける気などサラサラないらしい。番組は25分感タップリと “デイムがただただウマそうにフライを食い、自分の好みを発表する映像” が映し出されるのだ。


・その②カロリーと健康を無視

また番組内で登場するグルメは全てが超ド級の高カロリー。しかし出演者の誰もカロリーを気にしていないあたりが強烈に “アメリカ” を感じさせる。

おそらく日本のテレビでこれをやったら「健康的じゃない」「太りそう」といった声が上がるのだろうが、『フライ天国』は多分そういう次元で作られていない。デイムを含む登場人物の多くはなかなかの巨体の持ち主だ。「ウマいメシを作りそうな雰囲気」しかないな。


・その③やってることは彦摩呂

ちなみに元々デイムは動画配信をする一般人だったらしい。それがハンバーガーをウマそうに食べる動画でバズり、今では冠番組を持つまでになった。いわゆる「アメリカンドリーム」的なものを掴んだ人である。

ハンバーガーを食べて好き勝手言うことが仕事になるなんて、「うらやましい」と感じる人もいるだろう。しかし番組を見ていると、マネしようにも簡単にはいかないことがよ〜く分かる。

まずデイムはファストフードばかり食べている割に、全然不健康そうな雰囲気がない。それどころかメッチャ肌ツヤがよく動きも機敏だ。番組内で紹介されるグルメは全て「肉と油と炭水化物と砂糖の爆弾」みたいなヤツなのだが、彼が食べると不思議と上品に見える。

おそらく日本人がどんなに頑張っても、デイムのように美しくはファストフードをレポできないだろう。またデイムの食レポには「ウマいこと言って笑かそう」という明確な意図が見られ、要するに「やってることは彦摩呂と同じ」といえなくもない。

しかしながら本作はデイムの人間力が炸裂していること、さらにセンスある翻訳によって彦摩呂感を完全に消し去ることに成功。彼の決め台詞「サクッといこうぜ!」は流行語大賞も狙えるほどのパワーワードだ。積極的に使っていきたい。


・カンでマネしてみた

さて各グルメのレシピについて、一応番組内で簡単に紹介されているのだが、肝心なところが「特製の◯◯」「秘伝の◯◯」「自家製の◯◯」といった表現であるため、ほとんど参考にならない。食いたければアメリカへ来い、という超ストロング・スタイルなのだ。

それでも気持ちが抑えられなくなった私は、比較的レシピが単純な『ハドソンズのポーボーイ』(シーズン1・エピソード2に登場)を再現してみることにした。食材の種類やメーカーなど細かい違いはあるが、まぁ大目に見てほしい。

まず粉をまぶしたエビをタップリの油で揚げる。本場よりスケールは小さいがイイ感じに揚がっているようだ。

『特製の調味料』は一味唐辛子でごまかし……

限界ギリギリまでパンにエビを挟めば……


『ハドソンズのポーボーイ風な何か』の完成だ!


本場の味と比較しようがないが、これ相当ウマい。多少の失敗や雑さを全て油で包み込んでくれる……フライって本当に偉大だ。いつかアメリカへ行ったら必ず本物を食べよう。

『サクッと揚げたて! フライ天国』は現在Netflixでシーズン1(全8話)が公開中。トシのせいかジャンクフードが食べられなくなっている私だが、なぜか毎晩繰り返し見てしまっているぞ。アメリカのパワーを感じたい人、ぜひ!

参考リンク:Netflix
執筆:亀沢郁奈
Photo:Courtesy of Netflix / RocketNews24.