2019年6月21日、映画『X-MEN ダーク・フェニックス』が公開される。ご存じの方も多いと思うが、アベンジャーズなどの権利を持つ “ディズニー” がX-MENなどの権利を持つ “21世紀FOX” を買収、そのことから本作は「最後のX-MEN」などと呼ばれている。

ところがどっこい、こんな言い方はアレかと思うが、とてつもなく大きな話題になった「アベンジャーズ / エンドゲーム」と比べて『X-MEN ダーク・フェニックス』はさほど話題になっていない。果たして両者の差は何なのだろうか?

・当初はX-MENが優位

X-MENの第1作が公開されたのは2000年のこと。そしてMCU第1作の「アイアンマン」が公開されたのが2008年だから、歴史的にはX-MENの方が8年分のアドバンテージがあったことになる。むしろ映画「X-MEN」の成功を見たマーベルがアイアンマンで後追いしたくらいだから、当初はX-MENの方が遥かに認知度は高かったハズだ。

だが両者の立場はいつの間にか逆転してしまった。そもそもX-MENはマーベルの大人気タイトルで、それに目を付けた21世紀フォックスが映画化の権利を買い取ったものだ。マーベルは「スパイダーマン」の権利もコロンビアに売ってしまい、残ったのは成功の見込みが薄いものばかり。それでも今日のアベンジャーズは大成功を収めている。

・作風の違い

アベンジャーズがここまでヒットした最大の理由は、あまり深く考えなくても楽しいアメコミらしいアメコミ作品だからであろう。要するにポップということだ。もちろん様々な伏線が張られており見方によっては深い作品なのだが、子供が見ても楽しい作品であることは間違いない。

一方でX-MENはリアルかつダークを作風で、キャラクターの内面に迫る手法をとってきた。突然変異した人類「ミュータント」が活躍するX-MENは “差別” がテーマになっており、基本的にはリアルな作風とマッチしやすいタイトルである。事実、スピンオフ作品も含めれば10作品以上が公開されているから、決して失敗ではいないのだろう。

元々コミック版のX-MENは、子供がコミックを読まなくなっていた時代にマーベルの救世主となった大人向けの作品である。当時の読者たちはアメリカの盾を持ったコテコテのキャプテン・アメリカより、自らのパワーに葛藤するX-MENを支持したのだ。そして映画もその流れで制作された。

・ある偉大過ぎる作品

だがしかし、アイアンマンの公開を機にアメコミ映画の風向きが変わり始める。X-MENも何度かはポップ路線に舵を切るタイミングがあったハズだが、結局は “ある作品” からの呪縛から逃がれられなかったのだと記者は推測している。アイアンマンと同じ2008年公開の「ダークナイト」だ。


数あるアメコミ映画の中でも、いまだ不朽の名作として名高いダークナイト。リアルかつダークなテイストはX-MENと通じるポイントが多い。映画史の残る大成功を収め、実際に数多の賞を受賞した傑作中の傑作「ダークナイトシンドローム」から、最後までX-MENは抜け出せなかったのではなかろうか?

それはそれで決して悪いことではないのだが、アベンジャーズと大きな差が付いてしまったことは事実である。時代が代わった、時代の流れを読み切れなかったと言ってしまえばそれまでだが、1つの偉大なる作品が「今日のアメコミ映画界の様相を決定的なものにしてしまった」と見れば実に興味深い。


また、もし「ダークナイト」の公開以降に「アイアンマン」が制作されていたとしたら、もしかしたらMCUもダークかつリアルな手法を選択した可能性もある。それほど「ダークナイト」の完成度はすさまじく、実際にダークナイト路線を目指した「ファンタスティック4」は盛大にすっこけた。

ちなみに、ダークナイトのバットマン要するワーナーブラザーズはすでにポップ路線に舵を切っている。実際に「ワンダーウーマン」や「アクアマン」はMCU作品にも勝るとも劣らない秀逸な出来で、MCU作品に対抗できるポテンシャルを秘めているのではなかろうか? 時代はやはり、そちらを求めているのだ。

・ダーク・フェニックス公開

なお『X-MEN ダーク・フェニックス』は最後の最後までダークな作風であり、万人受けするとは言い難い。が、それでもダークな作風だからこそ描けるX-MENらしさを再確認したこともまた事実である。X-MENのみならずアメコミ作品が好きな人ならば、劇場に足を運んでもみてもいいハズだ。

今後数年のうちにディズニーの指揮下で新たなX-MENが登場することだろう。MUC作品らしい明るい作風になるのか? それともコミックやこれまで映画の色を一定は残す暗めの作品となるのか? いずれにせよ、そのとき大きな注目を集めることだけは間違いない。

参考リンク:「X-MEN ダーク・フェニックス」公式サイト
Report:P.K.サンジュン
Photo:©2019 Twentieth Century Fox Film Corporation

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