戦後から続く日本プロレス史において “天才” と呼ばれるプロレスラーが2人いる。1人は初代タイガーマスクこと佐山聡、そしてもう1人が武藤敬司だ。何かとこだわりの強いプロレスファンでも2人を天才と呼ぶことに異論はないだろう。

運動神経だけを見れば佐山の方が天才度は上かもしれないが、発想やセンスなど “プロレス力” は圧倒的に武藤の方が優れている……と個人的には思う。そんな武藤を語る上で欠かせないのが必殺技「ムーンサルトプレス」である。

・日常生活も困難

ファンならばご存知の方も多いと思うが、武藤の膝は限界をとうに超えている。理由はまさにムーンサルトプレスで、トップロープから猛スピードで膝をマットに叩きつける荒技は、武藤をトップレスラーに登り詰めさせると同時に膝の寿命を確実に削っていった。

これまで数えきれないほどの手術を繰り返してきたものの、現在は「歩くのも困難」だという武藤の膝。そしてついに今年に入り「両膝に人工関節を埋め込む手術」を決断したのだ。武藤はその理由を以下のように話している。


「今後もプロレスを続けたいがための決断。車で例えるとエンジンや他の部分はいいんだけど、タイヤ(膝)がボロボロ。そのタイヤを替えればまだまだこれまで以上にできるんじゃないかと思ってる」


医者からは手術後もプロレスラーとしてリングに上がることは許されているものの、ムーンサルトは封印するよう宣告されているという。そんな中、2018年3月14日に行われたレッスルワン後楽園大会で、武藤は生涯最後のムーンサルトプレスを披露した。

・人生最後のムーンサルトプレス

この日の武藤は浜亮太・SUSHI・宮本和志とタッグを組み、河野真幸・大和ヒロシ・中之上靖文・KAI組と対戦。最後はシャイニングウィザード3連発からのムーンサルトプレスでピンフォールを奪った。

全盛期とはタイプは違うものの、圧倒的な華やかさはいまだ健在である。トップロープに登った瞬間、武藤の脳裏には何がよぎったのだろうか? 新日本プロレス時代なのかWCWマットなのか? それとも全く違う何かだったのだろうか?

今後、武藤がムーンサルトプレスを披露することはないが、日本のファンはもちろん海外のファンにも武藤(ムタ)のムーンサルトプレスは語り継がれていくことだろう。プロレスファンにはぜひ「武藤敬司、人生最後のムーンサルトプレス」を目に焼き付けて欲しい。

参照元:YouTube
執筆:P.K.サンジュン

▼試合前にムーンサルトや膝について語る武藤。登場するのは23:26頃〜

▼そしてこちらが「武藤敬司、人生最後のムーンサルトプレス」だ。

▼おまけ。この時の武藤はいま見ても本当にカッコイイ! 入場曲の「HOLD OUT」も最高!!

▼ムーンサルトプレスの使い手は多いが、やはり圧倒的に武藤がカッコイイ。