新型コロナウィルス感染症の拡大が予断を許さない状況になっている。外出自粛や往来自粛を要請する都道府県も出ており、一部の小売店では大混雑が起こっているようだ。去る2月下旬にはトイレットペーパーが不足するというデマから買い占めが起こり、日本家庭紙工業会が否定の声明を出したことは記憶に新しい。

ビッグデータマーケティング会社の『True Data』が、全国のドラッグストア、スーパーマーケットの購買データを調査したところ、新型コロナウイルスの流行によって消費行動に変化が起きているという。前述のトイレットペーパーでは、消費者が殺到した2月28日の購買個数が1月平均(1日あたり)の約6倍を記録。衛生用品も前年同月比を大きく超える売り上げを示しているという。


・「台所用除菌・消臭剤」が前年同月比約3倍

前年同月に比べ、2月に飛躍的に売り上げを伸ばしたのが、アルコール除菌スプレーなどが含まれる「台所用除菌・消臭剤」のカテゴリー。ドラッグストアでは、前年同月比297.3%、つまり約3倍の売上個数を記録した。

続いて第2位がマスクの代用品として使われたであろう「ガーゼ」の約2.8倍。第3位が「ウェットティッシュ」の約2.7倍となっている。こまめに体温を計ることが習慣化したことで、「体温計」の売上個数も前年に対し約2.3倍を記録した。

その他、うがい薬、ハンドソープ、家庭用手袋、目・耳・鼻ケア用品(アイマスク、鼻洗浄液、花粉対策スプレーなど)、ベビー用衛生用品など、軒並み前年度売り上げを上回っている。もちろん、衛生用品がよく売れ、国民が清潔を保つことは決して悪いことではない。問題なのは不必要な買い占めや買いだめが起きたときだ。


・政府の見解

実際、筆者もドラッグストアや100円ショップで除菌スプレーや除菌ウェットティッシュの棚が空になっているのを目撃している。マスクと同様、ウイルスの危険を回避できることを期待して、つまりは身を守ることを意識しての購入だろうから切迫感がある。筆者も空になっている棚を見ると、思わず焦って「買わなきゃ!」という気持ちになってしまう。しかし、政府発表によると、例えば手指消毒用アルコールは

「国内主要メーカーは、各社それぞれができる限りの増産に取り組み、全体として2月は昨年月平均比1.8倍の増産であり、今後も増産を行う予定です」

とのことで、しかも

「まずは、石けんやハンドソープを使った丁寧な手洗いを行い、それができない場合にはアルコール消毒液で手指の消毒を行ってください」

「石けんやハンドソープなどで手洗いを丁寧に行うことで、十分にウイルスを除去できます」

と述べている。つまり、アルコール消毒液が手に入らなくても焦らず、まずは手洗いをするように、と言っているのだ。「台所用除菌・消臭剤」でキッチンや家具を消毒する必要があるのは、どこでもペタペタ触ってしまうような幼い子どもがいる場合などで、大人はまずは手洗いをするべきだろう。

そしてマスクは、ウイルス侵入を防ぐ効果には諸説あるようだが、筆者の場合は「不用意に口や鼻を触ってしまうことを防ぐ」という効果が確実にあるので、手作りのものでもとにかく着用するようにしている。


・スーパーマーケットでは

一方、生鮮食品を除いた食品部門では、自宅で簡単に食べられる「調理済みカレー(レトルトカレー)」や「米飯加工品(パックご飯)」、「ソースミックス」、「乾麺」、「冷凍麺」が売り上げを伸ばしているという。調理済みカレーで前年同月比約1.4倍、米飯加工品で約1.2倍だそうだ。比較的長く保存・備蓄ができて、いつでも食べられる商品で外出自粛をしのごうという消費者心理だろう。

加えて休校の影響と思われる「デザートの素」、「玩具菓子」、「果実・デザート缶詰」、「ピーナッツ・チョコクリーム」、「ココアドリンク」といった子ども向け商品が売り上げを伸ばしているようだ。

中国からの輸入が多い割り箸や食料品についても品薄の情報があったが、政府からは「一部の業務用野菜で中国からの輸入が一時減りましたが、現在は回復し、国産野菜も含め、国内の流通量は十分確保されています」「いつもどおりの購買行動をしていただければ問題ありませんので、消費者の皆様には、安心して落ち着いた行動をお願いいたします」と発表されている。


・正しく怖がる

基礎疾患のない人や、若い人でも重症化する事例が出るなど不安になる報道も多いが、有効な予防策として言われているのは手洗い、うがい、汚い手で口を触らないなど、気をつければ誰でもできる当たり前のことだ。パニックにならず、「正しく怖がる」ことが必要だろう。

かと言って、自分だけは大丈夫と過信して人の集まる観光地に遊びに出歩くなどは言語道断だ。危機的状況の今だからこそ、1人1人が冷静に行動したい。


参考リンク:True Data経済産業省日本家庭紙工業会
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.