実はコンビニのおでんというものを食べたことがなかった。理由は販売スタイルに抵抗があるから。そう、あのむき出しのスタイルだ。おでんはあらゆるものに晒され続け、中には指でツンツンつつき回す動画を公開する人もいる始末。絶対に無理である。そういうわけで、とにかく食べたことがなかった。

しかし2020年1月14日からファミリーマートが一部店舗にて、注文毎にパックから取り出してレンジで温めて売るスタイルでの提供を始めたという。これは良さそうな気がする。この機にファミマの新おでんをレビューしつつ、コンビニのおでん自体も初体験してみることに。

・4個か6個入りパック

さて、コンビニのおでんこそ初めてだが、おでん自体はもちろん何度も食べたことがある。味については昨今のコンビニのことだ。間違いなく美味いのだろうし、そこは心配していない。それよりも気になるのが具である。

レンチンするのだというが、そうなると例えば はんぺん は入っているのだろうか? 昔レンチンしたところ、縮んでふわふわ感が失われてしまった記憶がある。それに卵は爆発してしまうだろう。こういった不向きな具材は、何か特殊な技術で解決したのだろうか……?

などと考えつつ、レンチンスタイルに変更した店舗に来てみると……



選べるオプションは4個入り(税込み268円)か、6個入り(税込み358円)。具材としては、どちらにも含まれるものが大根、こんにゃく、ちくわ、さつま揚げ。6個入りで追加されるのが、たけのこと昆布

なるほど、もとより電子レンジでもOKな具材に絞ったようす。これで良しとするか否かは、それぞれの主義や好みも入ってくるだろう。個人的には、はんぺん、卵、ソーセージ、そしてロールキャベツがあると最高だが、この6個入りセットでもそこそこ満足できる気がする。

あるいは自由に好きな具材だけを選べない点こそ、人によっては最も大きなマイナス面になるのかもしれない。6種類でそもそも選択肢は少ないが、例えば大根だけ10個食べたいという人だっているかもしれない。まあ細かいところは他の商品同様、反響を見つつ改良していくのだろう。


・レンチン

いざ注文すると、店員さんが取り出したのは袋入りのパック。これを開封し、中身を容器に入れてレンチンするだけで終わる。今までよりも圧倒的な時間と手間の短縮具合。おでん用の鍋を洗う手間もなくなるし、従業員的には嬉しい変更な気がする。レジの待ち時間も減って客としてもうれしいはず。



しかもこのパックは常温保存が可能らしい。おでんのポップでも「フードロス削減」を謳っていたが、これなら確かに無駄は減るだろう。客から注文された分しか調理されないのだから。

そもそも1日平均でどのくらいロスが出るものなのか知らないが、間違いなく毎日出続けているはずだ。たまにレジ袋に具を放り込んで廃棄している姿を目にすることもある。しかし、新しい方式なら賞味期限を迎えるまで廃棄は出ない。

その賞味期限も長いようだ。購入するものを開封前に見せてもらったところ、今年の6月の日付が印字されていた。ちなみに最大で180日持つとのこと。これだけの長期保存が可能なら、店舗としては入荷数や在庫処理のコントロールもやりやすい。

本社からすればフランチャイズ加盟店からの発注数は減るだろう。それに、おでん自体の売り上げが今後どうなるかもわからないと、マイナス面が目立つ。しかしフランチャイズ加盟店や従業員からすれば、利点だらけの施策なのではなかろうか。


・美味い

身を切るような改善スタイルということで、ファミマに対する個人的な好感度は上がった。しかし純粋に客の立場からすれば、その辺はぶっちゃけ関係ない話。売り方のほかに重要なのは味だろう。心配していないのは冒頭に述べた通りだが、いざ食べてみると……



やっぱりウマい


従来のスタイルで作られているファミマのおでん と比較してどうなのかは全くわからない。しかし、純粋におでんとしてしっかり美味い。味も汁もしっかりと程よく染みているし、調理の具合もいい。

例えばタケノコの、柔らかさとシャキシャキ感のバランスなど、なかなかヤルではないか。きっと調理からパッケージングまでのプロセスで、ベストな状態を維持するための技術が使われているのだろう。

汁の濃さもちょうどよく、しかも最初からたっぷり入っている(というか最初から袋に入っていた分が、ほぼそのまま入っている)のもいいではないか。汁だくが良いのに足りないという事態はまず起きないだろうし、いらない人は捨てればいいのだしな。

ひたすら茹でっぱなしで、従業員に加水やら廃棄やらの判断が任されている(ガイドラインがあるのだろうが、実情としてはルーズになっているものだろう)と思しき従来のスタイルより、クオリティの安定化も図れて良いのでは? 

・袋のままでも売ってほしい

まとめると、個人的には、味、衛生度、提供までの手間などについて実に素晴らしいと思った。欲を言えば、開封せず袋のままでも売ってほしいところ。家でパッケージの外側もよく洗浄・消毒し、さらなる衛生度を確保して、好きなタイミングでレンチンして食べたいのである。

従来の売り方が不快であるがゆえに、生涯を通じて1度も買うことはなかったコンビニのおでん。しかしここにきてファミマであればアリだと思うようになった。人生で30余年目にしてついに、コンビニでおでんを買うという選択肢をファミマが提供してくれたわけである。

些細なことだが間違いなく嬉しいことだ。しかし従来からの顧客は選択肢を大きく失ったのも事実。この変更で離れる者もいるだろうが、それこそ私のようにこの方法なら買うという者もいる。

客観的に考えると、プラス面もマイナス面も同じくらいにあるのでは……と思える、ファミマの新しいおでんの販売方式。なんにせよ、本来の目的である食品ロス削減は、間違いなく取り組むべき事柄である。方向性はこのままに、全方面で満足度が上がるような改良を日々模索していってほしいところだ。

Report:江川資具
Photo:RocketNews24.