最近、自分の心情にとある変化が起こっている。以前に親子丼のルーツとされるお店を訪れた時からその兆候はあった。何かと言えば「発祥フェチ」である。何らかのグルメが創始された地を訪れると、著しく興奮してしまうようになった。

「発祥フェチ」を発症した筆者は、このたびスイーツの代表格であるショートケーキの始まりが気になりだした。スポンジ、ホイップクリーム、イチゴによって構成された甘美集合体……あの幸福ジェネレーターはいかにして発明されたのか。そして発祥の地の味はどんなものなのか。

・ショートケーキの起源

まずは起源を調べてみたところ、そもそもショートケーキと1口に言っても、形態や定義は国によって異なるらしい。我々が良く知るショートケーキは日本人向けに考案されたもので、その始まりについては、大きく2つの有力説が存在するようだ。

1つは、1924年創業の老舗洋菓子メーカー「colombin(コロンバン)」の創業者である門倉國輝氏が考案したとする説である。コロンバンの公式HPによれば、彼は90年以上前に渡仏してフランス菓子の製法を極め、日本式のショートケーキを開発したのだという。

もう1つは、あの「不二家」の創業者、藤井林右衛門氏を考案者とする説だ。「不二家」は全国規模のチェーン店であるため、すでにそのショートケーキを体験済みの方も多いだろう。そこで今回はコロンバンの方にスポットを当て、レポートしていきたい。


・元祖とされるショートケーキ

コロンバンの本店は東京・原宿にある。我々の良く知るショートケーキが実は南米の遺跡で発見されたのが始まりだったりしたら南米の遺跡まで足を伸ばすことになっていたので、国内の都市部で済んでよかったという思いだ。

店内は格調高い雰囲気で、客層も年齢が高めに見える。芳醇なまでの老舗の趣に「発祥フェチ」のツボをくすぐられつつ、目当てのショートケーキ(605円)を注文した。

やがてやってきたショートケーキに、思わず「うわあ、ショートケーキだ」と口走りそうになった。こう書くとメチャクチャ浅はかに聞こえるかもしれないが、なにせ目の前にあるのは元祖とされる代物であり、長年受け継がれてきた一品でもある。

まるで名画のオリジナルを目の当たりにしたような感動が湧く。今まで見てきたものがレプリカというわけでは決してないものの、スポンジとクリームの比率や、イチゴの赤々とした輝きに、不思議と「原作」感を覚えるのだ。

まさしく絵に描いたようなショートケーキにフォークを差し入れ、口に含むと、さらに感動は強まった。

濃すぎず淡泊すぎない甘さ、きめ細かで柔らかな食感が、理想のショートケーキ像にぴたりと吸いついてくる。心が弾み、その勢いで何度も口に運ぶ。

「ショートケーキのイチゴは中盤から終盤に差しかかる頃合いに食べる派」なので、タイミングを見計らって頬張る。みずみずしい甘酸っぱさが心地良い。

なんだか普段ケーキを食べている時以上に楽しい。その理由を考えているうちに、自分が童心に帰っていることに気がついた


・ある感傷

大人である今は自らが財布を握っていることもあり、ケーキという存在は半ば日常に溶け込んでいるものになってしまった。しかし子供の頃は、1つ1つのケーキが確実に非日常の出来事で、ビッグイベントで、抑えきれぬワクワクを胸いっぱいに抱えていた。

目の前のショートケーキには、そんな “忘れかけていたあの頃” を思い出させてくれる力がある。美味しいだけではない。懐かしく楽しい気持ちになれる。こういう貴重な体験ができるから、「発祥グルメ」は素晴らしい。

ふとテーブルを見ると、裏返しになった領収書に「お気付の点がございましたらお書き下さいませ」とのメッセージがあった。己の中のセンチメントが無軌道に走りすぎて、思わず「童心」と書きそうになったが、変質者でしかないので浅はかな真似はやめておいた。

会計を済ませながら心に誓う。この思い出は、胸の内に大切にしまっておこう。子供の頃、ケーキを食べ終わったあとのように。

・今回紹介した店舗の情報

店名 colombin(コロンバン)原宿本店
住所 東京都渋谷区神宮前6-31-19
営業時間 月~土 10:00~21:00 / 日曜・祝日 10:00~20:00
定休日 無休

参照元:コロンバン公式HP不二家公式HP
Report:西本大紀
Photo:Rocketnews24.

▼ショートケーキ発祥と言われるお店のショートケーキ

▼安心の美味しさ。懐かしい気持ちになれる

▼皆さんも童心に帰ってみてはいかがだろうか

▼ケーキ以外にランチメニューなども充実している。気品のある喫茶店のような感じ

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