一度目にしたら忘れられない。そんな帽子がある。ビジュアルが強烈で、そして……美味しそうなのだ。「なんのこっちゃ」と思った、そこのあなた。まあ聞いて、そして見てほしい。こちらの帽子、ホットケーキをはじめ様ざまなパン等がモチーフとされているのである。

じっと見つめていると、お腹がぐぅぅッと鳴ること必至。KENTさんという男性がひとりで制作しているという。なぜこのような帽子を作りはじめたのかなど、話を聞かせていただいたぞ。

・メロンパンやあんぱんなど、種類も豊富

“KENT BREAD HAT” の屋号で、件の帽子は販売されている。メロンパンやあんぱん、ハニートーストなど種類も豊富でいずれも、やはり美味しそうだ。見ているだけで楽しくなる帽子とは、なんともハッピー。

記者はSNSか何かでその存在を知り、一瞬でトリコに。これは購入せねばと、ホットケーキハット(税込1万8700円)をポチっとした次第だ。受注生産のため、注文から到着までしばらく時間がかかるが「本物はどんなんだろうなあ」と、待っている間がすでに楽しい。

そして到着してからが、これまた楽しい。写真で見てはいたが、思った以上に分厚くてフワッと美味しそうなホットケーキなのだ。てっぺんに乗ったバターがまた良い。お腹が空くなあ~~~!! 

作りもしっかりしており、サイズは頭周り58cmのワンサイズ。記者には少し大きかったが、調整するためのテープが付いているので安心だ。 


・KENTさんに質問してみました

いやはやしかし、なにをどうして、このようなユニークな帽子が生み出されたのだろう。気になって仕方がなかったので、製作者であるKENTさんにコンタクトを取ってみた。その結果、快く質問に答えてくださったので、みなさんと共有したい。

まずは帽子を作りはじめたきっかけについて、伺ってみた。

KENTさん「前職のキャラクターデザイナー時代にトータルコーディネートを学ぶ機会がありました。元もと帽子好きではありましたが、学びを通して帽子の重要性や楽しさを知り、多くの方に帽子の良さを伝えたいと思うようになったのです。

まずはじめに、帽子を取り入れたコーディネートをファッションSNSで発信しました。そこで全国のファッション好きの方々と交流して、帽子のサイズ展開の少なさ、帽子に苦手意識がある人の多さ、今までに無いようなデザインの帽子を求めている人が少なからずいることを知りました。

なるほどと思い、そんな方たちに向けて帽子を作りたいという想いが強くなりました。30歳という節目で会社を辞め、帽子の世界に飛び込むことにしました」

なんという思い切りの良さだろうか。記者は現在33歳だが、30を過ぎて新しいことに取り組むのは、なかなかに勇気がいるものだ。KENTさんの帽子への愛情がうかがえる。しかし、一体全体、なぜパンなどをモチーフにするに至ったのだろう。

KENTさん「帽子作りを学んでいた時、はじめて自分の力でベーシックな麦わら帽子をカタチにすることができました。完成した時は物凄く嬉しかったのですが、それと同時に帽子って誰でも作れちゃう物なんだな……とも思ってしまったのです。

これから帽子職人として活動をしていく中で、既存の帽子と同じような物を作る必要性や意味があるのだろうかと葛藤が生まれてきました。次第に自分が好きな物、作っていて楽しい物を帽子とミックスして徐々に今のスタイルが作られていった感じです。

パンをモチーフにしようと決めたのは、『しあわせのパン』という映画を観た影響です。誰にでも優しく寄り添う中で静かに存在感を放つパンを帽子に落とし込めたら素敵だなと感じ、毎日パンを食べるように、毎日帽子をかぶってもらいたいという想いを込めて制作しています」

『しあわせのパン』という映画、見たことがないのでさっそく見たくなってしまった。毎日食べるもの、使うものって、確かに大事だ。KENTさんのパンに対する熱意が感じられるが、食べるほうのパンでは何パンがお好きなのだろうか。

KENTさん「そうですね。中でも特に、カレーパンが好きです! 中野に帽子の生地の問屋さんがあり、最近はコロナ禍で行けていませんが、仕入れ帰りなどに、中野サンモール商店街にあるパン屋さんで買って食べたりしてました」

完全に同意だ。カレーパンは美味しい。カレーパンにも色いろあるが、記者は揚げてあるタイプのものが好きである。それはさて置き、帽子へと話を戻そう。KENTさんが、帽子を制作するにあたり、ここだけは譲れないというポイントはどこだろうか。

KENTさん「大手には真似が出来ない帽子を作っていくことだと思います。KENT BREAD HATの帽子はシルエットや型入れ、染色方法が複雑で、工場での量産が出来ません。

手作業による面倒臭い工程しか無いので、安価で模倣されにくい帽子になっていると思います」

いずれも、ほかに類を見ない帽子だもんな。手作りならではの大変さもあるかと想像するが、受け取る側としては世界にたった一つの品物のようで嬉しいものだ。最期に、今後挑戦してみたいことなど、抱負をうかがった。

KENTさん「テイストの近い作家さんとコラボして帽子以外のグッズ展開が出来ればと考えています。今のところ木工職人さんと作ったハットスタンドが販売されていますが、今後は文具やアクセサリーなども出来たら楽しいなと思っています」

ふむふむ、KENT BREAD HATの進化は続きそうだ。KENTさん、ていねいにお答えくださり、どうもありがとうございました! 

ただ見て触って、被っているだけでも十二分に満足。なのだが、お話を聞かせていただけてより一層、こちらの帽子が好きになった次第だ。

今後も、さらなる発展が期待できるKENT BREAD HATの帽子たち。自分へのご褒美や、プレゼントにも最適だ。「おやっ?」お思われたい帽子をお探しのみなさん、要チェックですわよ!

参考リンク:KENT BREAD HAT
執筆:K.Masami
Photo:Rocketnews24.

▼お腹が空くメロンパン……

▼あんぱん。シンプルで使い勝手が良さそうだ

▼こちらは毒りんご。ハロウィーンなどでも使えそう

▼夏用ホットケーキハットも可愛い

▼サイズ調整シールがついているので、サイズを気にしなくて良いよ