無印良品のカレーを世に知らしめた『バターチキンカレー』。2009年の発売以降、何度もリニューアルしながら店頭に並び続け、同社のレトルトカレー人気投票でも第1位。まさに看板商品と言えるヒット作だろう。

しかし、無印はバターチキンカレーだけの店にあらず! むしろバターチキンは数あるカレーラインナップの中のたったひとつに過ぎない。チキンやビーフのようなメジャーなものから「名前も聞いたことない」ようなマイナーなものまで、その数、実に30種類以上‼︎  なんでそんなにカレー推し⁉︎ ってくらいの種類がある。

今回は数あるラインナップから、グリーンやキーマなどの定番商品を除いて、「味が想像できないもの」「ちょっと珍しいもの」をチョイスして食べ比べてみた。

対象は『パラックパニール』『チャナマサラ』『プラウンモイリー』『プーパッポン』『マッサマン』の5種類。もし全部「ああ、あれね」と想像できるなら相当なアジア通だ。筆者は日清カップヌードルになったマッサマンを知っている程度。他は食べたことも聞いたこともない。

・リピート確定の2つ

結論から言うと、筆者がプライベートでもリピートしたいと思ったのは『マッサマン』『プラウンモイリー』の2つ!! 


順序が逆になってしまったが、ここから試食した感想をお伝えしていきたい。では、さっそく調理開始!

……と言っても湯せんするだけ。調理ではなかった。レンジでチンでもOKで、言うまでもなくものすごく簡単。まずはカレーの王様、マッサマンから行ってみよう。


・マッサマン / タイ

CNN Travelの「The world’s 50 best foods」で第1位を獲得したこともあり「世界一美味しい」と称されるタイカレー。ちなみに同ランキングでは第2位 ナポリピッツァ(イタリア)、第3位 チョコレート(メキシコ)、第4位 寿司(日本)、第5位 北京ダック(中国)で、これらを押さえてマッサマンカレーが首位を獲得しているのだ。いやが上にも期待が高まる!

特徴はローストピーナッツ。口にした瞬間、甘さがブワッと広がる。そして後からやってくる辛さ。パッケージでみると辛さは5段階中の2なんだけど、意外にも辛く、甘い → 辛い → 甘い → 辛いのエンドレスループになる。

奥深く、一言では表現できない複雑な味!! この複雑さが世界中の食通を夢中にさせているに違いない。タイ料理の真髄ここにあり!!

アーモンドとかカシューナッツとか、ナッツの入った料理はこってりと甘くなるが、東南アジア系の甘〜い料理が好きな人はドンピシャだと思う。これはクセになる。

逆にカレーが甘いなんて許せん!!という人は受け付けないかもしれない。好きな人はハマる、嫌いな人はひと口も食べられない、それがマッサマンだろう。筆者はリピート決定だ。


・プラウンモイリー(海老のココナッツカレー) / インド(ケララ州)

モイリーとは南インド・ケララ州で食べられているココナッツミルクのシーフードカレーとのこと。実は筆者は魚介類があまり得意じゃないのだが……

おお、クリーミー!!

ココナッツのおかげか柔らかく優しいお味。シチューのようなまろやかさで、これを嫌いな人はいないだろう! 辛さ表示は5段階評価で3だけど、ほとんど辛味は感じない。もしかしたら子どもでも食べられるかもしれない。

具材は少なめ、でもスープのような感覚でサラッといける。海老も主張し過ぎず、自然に馴染んでいる。臭みはまったくない。シーフードが苦手でも大丈夫、むしろもっと海老があってもよい。明るいイエローのカレーで目にも鮮やか。

これはアジア料理が得意な人にも苦手な人にもお勧めできる味で、筆者もリピートしたい。なお、無印良品のレトルトカレーは通常サイズ(180g)と「小さめカレー」(90g)の2サイズあるのだが、プラウンモイリーは「小さめ」限定のようなので、探すときには注意して欲しい。


・パラックパニール(ほうれん草チーズカレー) / インド

パラックはほうれん草、パニールとは乳牛や水牛の乳で作ったインド風のカッテージチーズのことだそう。カレー屋でたまに見る緑色のカレーの正体はこれか!

無印のものは緑色というよりは、くすんだ茶色に近い。パニールは、噛んでみると弾力のある豆腐という感じ。クセはなく、これだけでもパクパクいける。

トロリとしたペースト状のカレーで、ほうれん草のえぐみや青臭さもまったく感じないから、たぶん野菜嫌いでも食べられると思う。

他のカレーがスパイスの微妙な調合で複雑な味を出しているとすると、このパラックパニールはインドの田舎のおばあちゃんの味というか、どこか素朴な感じがする。辛さ表示は5段階評価で4だが、そんなに辛くはない。むしろチーズのせいか、ちょっと塩気が強く感じる。「おばあちゃん、しょっぱいよ!」と訴えても「いいんだよ」と有無を言わさず納得させられそう。


・チャナマサラ / インド・パキスタン(パンジャーブ地方)

チャナとは「ひよこ豆」のことだそう。ひよこ豆のカレーは「ダール」でしょ、と思ったら、ダールは「豆類の総称」なんだそうな。

無印良品にも「ダール」があるが、ひよこ豆とキマメの2種類を煮込んだカレーとのこと。ひよこ豆オンリーの場合にチャナを名乗れるようだ。おなじみ「マサラ」はスパイスミックスのことで、クミン、コリアンダー、カルダモンに、トマトの酸味を生かした味という。

具材として豆がたっぷり入っているので噛みごたえがある。それでいてなかなか辛い。チリビーンズのような刺激のある辛さで、日本人にも馴染みのあるトマトベースなので食べやすい。ある意味、安心できる味というか、予想を裏切らない味


・プーパッポン(蟹と卵のカレー) / タイ

最後にタイからプーパッポン。響きがよくて何度も口にしてしまうが、「プー」は黄色いクマさんではなく、タイ語で蟹の意味だそうだ。さて、これは……

開けた瞬間から蟹!!

他のすべてのカレーを凌駕するほど、とにかく海老というか蟹というか甲殻類の匂いが広がる。あの殻ごとブツ切りにして食べる、いかにも熱帯な感じの蟹!! 一瞬にして、台所から居間までアジアの喧騒に包まれた。

味はカレーというよりは、魚介類の濃厚な煮込みという感じ。具材は今回の5種類の中で1番多く入っている。ほぐした渡り蟹の身、卵、玉ねぎがトロットロに煮込まれ、魚醤やオイスターソース、ココナッツミルクが加勢し、これでもか、とダシが出ている。

かなり魚介の風味が強く、好き嫌いが分かれるかもしれない。食べたことはないが、たぶん現地のものに近いんじゃないだろうか? 今回もっとも強烈に異国情緒を味あわせてくれたのがプーパッポンだった。いや〜、世界は広い。


・すごい時代になったもんだ

何気にすごいのは、全国どこでも通信販売で同じ味が手に入ること。エスニック料理の専門店がひしめく都会ならいざ知らず、世界の味がご自宅でって、ひと昔前までは考えられなかったことだ。田舎のおじいちゃん、おばあちゃんにも食べさせられるぞ。

ちなみに「小さめカレー」を買ってたくさん並べると世界のカレーバイキングになってかなり楽しい。筆者も、作るのも補充するのも食べるのも自分という1人バイキングを堪能した。いずれも無印良品の店舗の他、ネットショップでも購入できるのでお気に入りの1品をぜひ探してみて欲しい!


参考リンク:無印良品[1][2]、CNN(英語)
Report:冨樫さや
Photo:RocketNews24.