世界の偉大な経営者といったら誰を思い浮かべるだろうか? 日本でこの質問をしたらパナソニック創立者の松下幸之助や、新1万円札に起用され21年の大河ドラマ化が発表された渋沢栄一と答える人が多いだろう。

世界に目を向けたなら、Apple創業者のスティーブ・ジョブズだろうか。では馬雲(マー・ユン)は? アリババ創立者のジャック・マーだ。

・稀代の経営者ジャック・マー

ジャック・マーは中国最大のIT企業アリババグループの創始者で、アジアいちのお金持ちとも言われている人物だ。

杭州の裕福ではない家庭生まれ。その逸話を見てみると、勉学方面でメチャクチャ優秀だった……というわけでもなく最初の大学受験では数学の点数がなんと1点! 3度目の受験でようやく合格している。その後、就職はスムーズ……というわけでもなく、30社以上応募するも全て不採用。なかには「イケメンではない」という理由で断られたこともあるのだとか。

しかし、卓越した英語能力を買われ、英語教師に。その後、1999年にアリババを創設し20年、世界レベルの大企業にまで育て上げた。

・多くの金言を残す

そんなマー氏は、演説が大変巧みだ。生来のものか、教職に就いていたためか、苦難の道のりの末なのか……それはわからないが、ビジネス以外の万事に通じるような金言を残している。たとえば

・明日を待つな、明日はあまりにも遠い。今日すぐに行動しよう。

・全ての人に成功の機会がある、自分で自分に機会を与えるかどうかだ。

・他人が “お前はおかしい” と言うのなら、それはもう成功から遠くないということ。

などである。そんな彼は2018年9月10日、1年後に会長職を辞することを発表。予告通り2019年9月10日に引退した。

・退任の年の演出もド派手 / 歌もうまい

その引退日は、年に一回開かれるアリババの記念イベント “年会” 当日でもある。ジャック・マーと言えばアリババの年会はじめとしたイベントでの「サプライズ演出」も有名だ。

もう何というかギャップがハンパない! もはやコスプレであり、過去には白髪のV系メイク、ブロンドのカツラにピンクのドレスというお姫様スタイルを披露したり、マイケル・ジャクソンに扮したこともあった。「马云 年会」で画像検索でもしていただいたらイッパツだろう。

退任の年となる2019年はどんな演出になるかと楽しみにしていたが、やっぱりド派手! パンク風の衣装に身をつつんで登場。『A BAND』というバンドを結成し、ギター&ボーカルを担当していた。

詳しくは動画をご覧いただきたいが、歌もうまい。経営者の酔狂ではなく、しっかり聞かせてくるところがさすがである。

・最後の出勤日ではもみくちゃに / 愛された経営者

退任日は9月10日であったが、最終出勤日は前日の9月9日であった。この日、Weiboではトレンドワードに上がるほど関心が高まっていた。そのなかで、従業員たちにもみくちゃにされながらオフィスを後にするマー氏の動画が公開され、大きな話題となったのだ。

彼は、ブラックな働き方「996(9時~21時を週6日)」擁護ともとれる発言で炎上したこともある。100人いて100人がマー氏に良い感情を持っているとは言わないが、もみくちゃ動画からは彼が大変愛された経営者であったことが伝わってくるようだ。

今後、マー氏は教育や公益活動にチカラを入れていくとされている。教壇に戻るという情報も。マー氏は「アリババは夢のひとつだった」と語っており、稀代の経営者の次の “夢” が気になるところだ。

なお引退日9月10日は、ジャック・マーの誕生日であり、また中国の「教師の日」である。彼にとって、ふさわしい退任日だったのかもしれない。

参照元:東方財富網Weibo @新浪科技搜狐(中国語)、YouTube
執筆:沢井メグ
イラスト:稲葉翔子