いまある漫画原作者の悲痛なツイートが注目を集めている。ホラー漫画『殺戮モルフ』の原作者・外薗昌也先生だ。12月20日に発売予定の単行本の一部のページが真っ黒に塗りつぶされて世に出ることになったというのである。

さらに衝撃的だったのが、外薗先生によると「全く相談なしだった」ということ。ネットユーザーからは「信じられない」「筋が通っていない」という声が相次いでいる。

漫画が雑誌や単行本になるには、漫画家や原作者と編集との間で綿密な打ち合わせがあるというイメージが強いが……最近、ほかにも “出版時に規制がかかったことがある” 漫画家がいると判明。よくあることなのか疑問をぶつけてみた。

ということで、聞いてみたのはロケットニュースでお馴染みの漫画家・プロデビュー18年を迎えたマミヤ狂四郎氏である。

・モザイクをかけられたことはある

マミヤ「事前相談なしに黒塗りになったことはないけど、あまりにも表現が卑猥だったのか、コマ中の一部にモザイクをかけられたことはあるなぁ。でも、雑誌の発売前には担当さんが「スミマセン、ウチはシモネタに厳しくて……」ってチン謝してくれたぞ。

その時オレは、「この出版社のギリギリラインを超えてしまったんだな……迷惑かけちまったぜ……」って大いに反省したもんよ。つねにギリギリを攻めるのが信条だけど、プロフェッショナルにとってコースアウトは恥だからな」

・ボーダーラインは雑誌によって違う

マミヤ「ちなみにギリギリラインは、出版社によって違う。「イケる!」と思った出版社では、けっこう思い切り下半身(主に珍宝)を出すことにしていた。もちろん自分でモザイクをかけてから入稿だ。担当さんの手をわずらわせたくはないからな。

でも、その時、担当さんに「もしもギリギリ超えていたら、あらためて濃いモザイク、あるいは黒丸で隠してくださいm(_ _)m」なんて自ら申し出たりもしたよ。別にオレは露出狂じゃないから。あくまでも漫画の表現だからさ」

・漫画家が見る『殺戮モルフ』のケースの問題点

マミヤ「今回の『殺戮モルフ』のケースを見てみると、なんというか、作家と編集サイドの “コミュニケーション不足” だったんじゃないかなぁ……って思うよ。“ギリギリラインの共有不足” というか。不仲だったのかなぁ……なんて勘ぐっちゃうね。

しかしながら、出版社の本なり雑誌に載る漫画ってのは、いつ直されても仕方ない……って気持ちも大切なんじゃないかなぁ。だって商売だし。責任負うのは出版社だし。特にエロ・グロはリスキーだし。もしも直されたくなかったら、自己責任で自費出版するとかね」

・黒塗りと言えば、こんなこともあった

マミヤ「そういえば、黒塗りといえば、オレが関わった雑誌(グラビア誌)で、こんな事件が過去にあった。雑誌に載ってた写真のなかに、男性編集部員の “珍宝” が写った1枚があったんだ。校正で見抜けなかったんだな。

でも、もう雑誌は印刷も終えて製本されちまっている。あとはコンビニや本屋に送り込まれるだけ……みたいな段階で “珍宝” が発見されたからサア大変。回収したら大赤字だろ。その時、その出版社はどうしたか?

なんと、社員総出で印刷所に赴き、各自支給された油性マジックで、夜通し、印刷された男性編集部員の “珍宝” を1本1本、黒塗りしていったらしいんだ。何万冊、あるいは何十万冊もの雑誌を1冊1冊……。

俺の担当さんも、その「 珍宝マジック黒塗り作戦」に参加したらしいが、なんだかよくわからない一体感があったらしい。ちなみに、その “珍宝” が出てしまった男性編集者は、その後、まもなく転職していったなぁ……」

──以上である。

だんだん本題からズレていった気もするが、マミヤ氏の話からわかることは、やはり漫画は作者と出版社の二人三脚を経て世に出るということだ。描く人がいて、売る人がいてこそ日本中の、世界中の読者の手に渡るのである。

ツイートを見る限り、今回の一番の問題は「事前の相談がなかったこと」につきるのではないだろうか。

事前の相談があれば、コミックスが黒塗りのままになることなく、何らかの策が取られたかもしれないと思うと残念でならない。しかし、印刷された後と見られる今となっては……原作者の告白から大きな反響を呼んだ『殺戮モルフ』黒塗りの件。今後、「消されてしまったページ」が日の目を見る日は来るのだろうか。

参考リンク:Twitter @hokazonomasaya
執筆:沢井メグ
協力:マミヤ狂四郎
Photo:Rocketnews24.

▼こちらが外薗先生のツイート。相談なしに、とは驚きだ