事実は小説よりも奇なり。私(中澤)は現在、男2人でルームシェアをしているが、たまに奇怪な事件が発生することがある。そんな事件の真相に迫るのが「男の事件簿」だ。

本日の主役は、普段私が使っている米の計量カップ。米を炊く時の必需品で、もう5年以上使っている馴染みの顔である。だが、先日そんな計量カップが行方不明に! 発見されたのは不可解な場所だった

・いつもの場所に計量カップがない

計量カップがなくなっていることに気づいたのは夕飯に米を炊こうとした時。米袋の中に入れているはずのカップがない。洗って乾かしているのかとも思ったが、食器の水切りにも食器棚にも、計量カップの姿は見当たらなかった。

机にタンス、本棚の上など、置くはずのないところを念のため探してみたが……やはりない。この時点で少し不審に思ったのだが、細々したモノをなくすのはよくあることなので「そのうち見つかるだろ」と切り替えることにした。

・米は炊かなければならない

それよりも、今はどうやって米を炊くかが先決である。そこで仕事で出払っていたルームシェア相手のK氏にラインを送った。「計量カップがなくなったから借りるで」と。

既読はつかない。おそらくスマホを見ている暇がないのだろう。まあ、計量カップを借りたくらいで怒る男ではない。私は返事を待たずにカップだけ少し拝借して返すことにした。

・K氏の部屋の扉を開ける

おそらく、K氏のカップは彼の部屋の米びつの中である。幸い、普段からK氏は「俺がいない間に部屋に入ってもかまわない」と言っていた。そこで、普段ほぼ入ったことのないK氏の部屋の扉を開けた。

同じ間取りでも他人の部屋というだけで迷宮のようである。どこに何があるかは当然分からない。おまけにK氏の部屋は機材などの大きいモノが所狭しと積み上げられ、6畳間が通路のように細くなっているため、さらに迷宮感が増している。

元々の位置を動かさないように部屋を捜索したところ、ベッドの向かいに怪しい容器を発見。米びつのように見えるが……。確認する方法は2つしかない。本人に聞くか、実際開けてみるかだ。いまだK氏からの連絡はない。そこで、その容器を開けてみた。

・容器の中にあったもの

容器の底には米が数センチほど積もっている。どうやらビンゴのようだが、私の視線は米の上に置かれていたあるものにくぎ付けとなった。

米の上には計量カップが2つ投げ出されていたのである。1つはK氏の米用計量カップだろう。しかし、あと1つは……? 料理に対して大雑把なK氏が計量カップを米以外で使っているのなんて見たことがない。そこでよく見てみたところ……


ワシの計量カップやないかッ

一瞬、私が間違ってここに入れたのかと思ったが、前述の通り、私はK氏の米びつがどれかすら知らなかったのである。論理的に考えるなら、K氏がパクッたとしか思えない。反射的に私は、米びつの中の衝撃画像を添付し、K氏にラインしていた。「パクッとるやないか!」と。

・謎

だが、不可解なのは理由である。K氏には私の計量カップをパクる理由がない。なぜなら、自分のものをすでに持っているからだ。ラインはまだ既読にならない

ひょっとして計量カップコレクターなのだろうか? 同じ製品だから同じものと考えてしまうのは、初歩的な推理ミスかもしれない。ミステリーでも、双子が入れ替わって1人の人物になりすますのはトリックの常套句じゃないか。と、その時、一気に既読になるライン


そして、K氏から返事が返ってきた!!


K氏「出来心やったんです!」

──やっぱパクッてたんかーーーーーい! いや、それ以上に気になるのは理由だ。私の計量カップを一体どうするつもりだったのか? ひょっとしたら狂気の片鱗を覗くことになるかもしれない。だが、聞かなければ今の生活にも響いてくるだろう。

・真相

とりあえず、この返信はスルーし、帰ってきたタイミングでK氏を確保。取り調べを行った結果、犯人の供述はこうだった。

ことの発端は最後に米を炊いた数日前。我々の夕飯は、手が空いている方が相手分の米も炊いて用意することが多いのだが、その日はK氏が米炊き役だった。

自分の米びつの残量を見て2人分の量がないと判断したK氏は、半分私の米を使うことにしたという。まずは、私の米袋から1合、袋に入っていた計量カップを使用しすくい上げた。続いて、その計量カップで自室の米びつから残りの量を都合する。

事件はこの時発生した。米研ぎにすでに気が移っていたK氏は、計量カップを体にしみついた動作で自分の米びつに片付けてしまったのである

そして、計量カップは仕事を終えた地で眠りについた。私が米びつを開くその時まで。つまり、不可解な計量カップ失踪事件の真相はただのうっかりであった。ラインの「出来心やったんです!」という返信はその時のノリでやってしまったとのこと。まさに出来心だったようだ。

男が2人集まれば、そこには事件の匂いがする。今回も誠に奇怪な事件だったが、その真相は男同士ならではのものだった。ルームシェアで起きた謎の事件を追う「男の事件簿」。次回があるかどうかは闇の中。

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.
Screenshot:再現CGメーカー、LINE(iOS)