私(佐藤)がポールダンスを習い始めて4年。その4年の間に業界の様子は少しずつ変化しており、以前よりも競技人口が増えた気がする。とはいえ、まだまだ知らない人が多く、「オッサンがセクシーダンスをしている」といった、妙な誤解を招くことも少なくない。上手く説明しようにも、言葉だけで伝えるのには限界があり、動画や画像でも伝えきれない部分も多々ある。

そんななかで、ポールダンスを題材にした漫画の連載が始まっていることを知った。その作品『シルバーポールフラワーズ』はまさにポールダンスの青春漫画だ。私は言いたい、よくぞ漫画にしてくれました! と。

ぜひとも描いている方にお話を聞きたいと思い、作者の如意自在(にょいじざい)先生にインタビューをさせて頂いた。先生はなぜポールダンスを漫画にしたのだろうか?

・ポールダンスとポールスポーツ

ポールダンスを習い始めてしばらくしてから、私はこのスポーツには大きく分けて2つの分野があることを知った。ひとつはショーで演じられる「ポールダンス」。そしてもう1つが競技化された「ポールスポーツだ。

ステンレス製や真鍮(しんちゅう)製のポールを使って、さまざまな技を決める。その点はどちらも変わらない。しかし、根本的な部分ではこの2つは水と油、目指すところが違うといっていい。あえて音楽に例えるなら、ポールダンスは「ジャズ」だ。自由で表現は人それぞれ。より華やかにより情熱的に演技を行うさまは、ジャズに通じる。

一方のポールスポーツは「クラシック」だ。ルールにのっとって、決められたことをより完ぺきに演じるところは、譜面に従うクラシック音楽に近い。

しかしそれを説明するには、言葉だけでは不十分。映像で見せたとしても、興味のない人には2つは同じものに見えるだろう。どうにかその違いを上手く伝えることはできないか? そう思っていたところ、この漫画作品に出会った。おそらく日本初ではないだろうか、ポールダンスをテーマにした漫画作品は。少なくとも私は他にそのような作品を知らない。


・アニメ化された『はるかなレシーブ』の作者

本作は講談社の「コミックDAYS」「マガポケ」、そしてスポーツ情報サイト「スポーツブル」と講談社による共同プロジェクトの「コミックブル」の3媒体で同時連載している。現在(2020年12月25日)18話まで公開(一部有料)しており、12月9日にコミック1巻が刊行されている。

作者の如意先生の代表作は、アニメ化されたビーチバレー漫画『はるかなレシーブ』(芳文社 全10巻)、スポーツ青春漫画を得意としている。そんな先生がなぜ、ポールダンスをテーマに選んだのだろうか? その疑問を率直にぶつけてみた。


・なぜ漫画に?

佐藤 「年末のお忙しいところ、お時間頂き、ありがとうございます。作品を知ってすぐにインタビューをさせて頂きたいと思ったんですよ」

如意 「私も佐藤さんにお会いしたいと思ってたんですよ」


佐藤 「え?」

如意 「ポールスポーツについて調べていた時に、佐藤さんの記事を読ませて頂いて参考になったんですよね。もっと詳しく教えて頂きたいなと思ってたんです」


佐藤 「参考だなんて……、恐縮です。それにしても、なぜポールダンス・ポールスポーツをテーマにしようと思ったんですか?」

如意 「以前から興味を持っていました。1つのスポーツに2つの分野があるところが興味深く、作品の題材として選んだんですよね」


本作はポールダンスを愛する上崎華(うえさきはな)と、ポールスポーツを極めんとする高峰花凛(たかみねかりん)という2人の大学生が、互いの意地とプライドをかけて切磋琢磨する物語だ。2人の考え方やこだわりを通して、ポールダンスの現状をこまやかに描いている。


如意 「私自身、より深くポールダンスについて知りたいと思い、今年のはじめから習い始めてはいたんですけど、このコロナ禍でレッスンがお休みになったり、忙しくなったりでなかなか通えなくなってしまって……」

佐藤 「ほとんどのスタジオが自粛期間中はお休みしてましたね。今も以前のように安心して練習やレッスンはできませんからねえ。発表会の開催を見送るスタジオも多く、やってもオンラインとか……。レッスンも少人数で消毒・マスクは欠かせないですし。なかなか元に戻れないですね……」


・リアリティのある会話

佐藤 「ポールダンスを描く上で、苦労されることはなんですか?」

如意 「とにかく情報が少ないことでしょうか。調べてもわからないことが多いので、その点が1番苦労しますねえ」


佐藤 「マイナースポーツですからねえ。野球やサッカーみたいに、テレビや雑誌、ネットですぐに調べられるものじゃないので。ポールは技数がたくさんあるのに、その技の名前をやってる自分でも知らないなんてこと、しょっちゅうありますから。教科書みたいなものがないですよね」

如意 「あとは、複雑な姿勢の技を描くのが難しいですね」


佐藤 「その気持ち、わかります! 海外のポールダンサーの技を手本に、練習でマネしようとしても「この右手はどうなってんの?」ってなることありますもん。人間離れした技をやる人とかいますから。マネしようと思っても全然参考にならない(笑)」

如意 「描くのが難しいスポーツですね」


佐藤 「ところで、作品を読んでいて強く感じたのは、2人の主人公がとても魅力的ですよね。会話の一言一言に重みがあるというか、リアリティを感じるんですよ。人物を描く上で心がけていることはありますか?」

如意 「心がけているのは、登場人物の人生を組み上げることでしょうか。この作品でいえば、華と花凛の人生を1度形作って、その彼女たちの人生を通した言葉で会話をするようにしています」


佐藤 「生き方が会話に影響しているんですね」

如意 「そうですね」


・将来的には?

本作は8月1日に始まったばかり、物語は2人が互いのことをわかり始めた段階に過ぎない。将来的にこの作品をどう育んでいきたいのかを尋ねると……。


如意 「週刊連載はこの作品が初めてなので、今はまだ精一杯やっていくことだけですよね」


先生は控えめなコメントを残してくれたが、私はアニメ化される未来を勝手に期待している。ポールダンスのアニメが放映されれば、より多くの人にポールダンスのことを、より深く知ってもらえるはずだから。


最近はテレビのバラエティ番組でも、芸能人がポールダンスに挑戦する企画を目にすることがある。以前よりも知られる機会が増えたのは良いことだ。もしも興味を持って、より深く知りたいのであれば、この作品はうってつけだ。仮にポールダンスに興味がなかったとしても、華と花凛、2人の主人公の織りなす物語には、胸を熱くする青春が詰まっている。スポーツと青春を愛するすべての人に、オススメしたい作品だ。

参考リンク:『シルバーポールフラワーズ』(コミックDAYS)・マガポケコミックブル)、コミック第1巻 Amazon Kindle版
執筆:佐藤英典
Photo:Rocketnews24
[ この記事の英語版はこちら / Read in English ]

▼如意先生にイラストを描いて頂きました! (C)如意自在/講談社

▼シルバーポールフラワーズ公式Twitter
https://twitter.com/silverpole_info/status/1336324665363460101

[ この記事の英語版はこちら / Read in English ]