今年は自然災害の多い年だった。2月には北陸地方で記録的な豪雪、7月の豪雨では西日本を中心に甚大な被害が出た。台風が相次いで日本列島を縦断し、21号の影響で関西国際空港は一時閉鎖される事態となった。災害対策の重要性を再確認する1年となったと言えるだろう。

さて、そんな災害対策の影響は、思わぬところにも出ている。東京・青梅市は映画看板で有名な街だが、残念なことに街を象徴する大型看板は10月末に撤去されることになった。あのぬくもりを感じる看板を見ることはできなくなったのだろうか? 実際に青梅の駅を降りてみると、規模は小さくなったものの、見て楽しむことができる看板はまだ数多く残っていた。

・手描きの映画看板

今のような大型印刷技術が普及していない時代、映画館の看板はすべて手描きだった。40代の私(佐藤)も地元の映画館の手描き看板を見た覚えがある。写真を複写している訳ではないので、いくぶん個性的なタッチのものも少なくなかったが、それでもあの大きな画を見ているだけで、ワクワクしたものだ。


青梅の街からは、すべてそれらの看板がなくなってしまったのだろうか? 駅を降りると改札に向かう地下道には、看板絵師の久保板観(ばんかん)氏の作品が飾られている。風の影響を受けない場所では、作品が貼り出されている。


画そのものもさることながら、キャッチコピーを見ているだけで作品を見てみたいと思わせるものがある。



・バス停の『バスストップ』

駅を出て、駅前から旧青梅街道を東に進むと、通り沿いの店先には小さな看板がいくつも見てとることができる。バス停にはマリリン・モンローの『バスストップ』の看板が!


中にはジョン・フォード監督の『荒野の決闘』。作品に対する敬意を感じる。


ふとバス停の脇を見ると、看板撤去に関するお知らせが掲出されていた。


住江町商店街振興組合は、安全を考慮して撤去の決断に踏み切った。残念ではあるが、もしものことを考えると英断と言って良いのではないだろうか。大きな看板はなくなったが、小さな看板でも十分に見て楽しむことができる。


・猫看板?

たとえば、「猫の街」として地域活性を目指す取り組みとして、映画と猫のパロディ看板もある。

「猫と共に去りぬ」や「ニャジラ」などは、思わずほっこりとしてしまう。




・1つひとつの店先に

青梅赤塚不二夫会館の正面にある駐車場には、「ひみつのアッコちゃん」。


旧青梅街道沿いのお店には、店先に看板が掲げられている。それらをひとつひとつ見て歩いているうちに、気が付けば隣の東青梅駅までたどり着いてしまう。






青梅に向かう電車のなかで、奥多摩の紅葉を見に出かける人の姿を多くみかけた。紅葉狩りを楽しんだら、帰りに青梅の駅で降りてみて欲しい。古き良き昭和の佇まいが色濃く残るこの街で、ほっこりとした気持ちを味わうことができるはずだ。

参照元:日刊スポーツ
Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24