earthquakelights

地震発生の前後に、謎の発光体が目撃されることがある。「UFOではないか?」と指摘する人もいるようだが、その発光体の正体は不明。この現象について、最近海外の科学誌が過去の目撃例をリスト化して公開し注目を集めている。

・謎の発光体が目撃される「地震発生現象」

これは「地震発光現象」(earthquake lights)という。科学誌「地震学研究レターズ」は、1600年から現在までの報告をまとめ、65件の目撃報告を公開したのだ。それによると、世界各地で発光体が目撃されていることが判明した。

・過去の目撃報告

2009年 イタリア・ラクイラ
地震発生の直前に歩行者は、街の石畳の上に、約10センチの高さで光る炎を目撃した。

2007年8月15日 ペルー・ピスコ
マグニチュード8の地震が発生した際に、海軍士官は淡いブルーの光の列が、4回にわたって炸裂するのを目撃している。その光は、街の防犯カメラでも記録されていた。

1988年11月12日 カナダ・ケベック
大きな地震の発生する11日前に、ケベック市近くのセントローレンス川を沿って移動するパープルピンクの光を放つ球体が目撃されている。

1906年4月18日 アメリカ・サンフランシスコ
大地震が起きる直前に、サンフランシスコ西部の丘陵地帯ふもとで、青い炎が浮遊する様子が目撃されている。またカリフォルニア州サンノゼの南では、美しく虹色に燃えるかすかな炎が見られたそうだ。

・正と負の電荷

NASAエイムズ研究センターの上級科学者フリーデマン・フロイント氏によると、「この現象は、非常にまれな状況で起こる」と指摘している。「強力な地震波が地面を通り抜けて、岩の層(玄武岩 と 斑(はん)れい岩)に当るときに、大きな圧力と速さで岩を圧縮し、大量の正と負の電荷が発生する状況をつくる」と説明している。そしてそれは、プラズマ放電現象と呼ばれる状態に達するという。

・もうひとつの要素、垂直断層

もうひとつ地震発光現象に必要な要素として、垂直断層がある。玄武岩や斑れい岩になるために凝固するマグマが、垂直断層によって上昇する。そのときに、非常に長い堤防のような状態を形成するのだ。カナダの天然資源省の地質学者は「この堤防がじょうごのような働きをして、電荷を集中させて、空気中に飛び出したときに光を放つ」と結論づけている。

・UFOと間違われる

地震発光現象で目撃される光は、UFOと間違われることが多い。その象徴的な写真のひとつに、1970年初めにカナダで撮影されたものがある。ジム・コナカーさんという男性が妻とタギッシュ湖でボートを漕いでいた。そのときに、山の側面に7つの光が漂っているのを目撃しているのである。実は撮影日時については不明で、地震との関連性も明らかにされていない。しかし1973年7月1日に湖の近くでマグニチュード6.7の地震が記録されているのである。研究者らは、ジム氏が地震発生の2~3時間前にこの写真を撮影したものと推測している。

・事前に察知する「警告システム」にはならない

地震発生の直前に、発光現象が確認できるのであれば、地震を予測し事前に被害を最小限に食い止められるのだろうか? 先にもお伝えしたように、まれな状況下でしか光は目撃されていないので、残念ながら「警告システムとしては機能しない」と専門家は語る。

・しかし助かった命もある

だが、実際に光の目撃が地震の前触れを知る手がかりになった例もある。2009年のイタリア・ラクイラの地震のとき、ある男性は戸外でまぶしい光を目撃して、家族を安全な場所に避難させることに成功している。彼はたまたま読んだ新聞で、地震発光現象を知っていたのだ。1976年7月28日に中国に住んでいたカナダ人地質学者は、地震発光現象に遭遇しすぐに戸外に飛び出した。その後に、甚大な被害をもたらした唐山大地震が発生している。

いずれにしても、謎の多い地震発光現象。今後の研究が気になるところである。

参照元: USA TODAY(英語)
執筆: 佐藤英典