2021年6月11日、度重なる延期を経て『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ(以下「閃光のハサウェイ」)』がついに公開されました。多くのガンダムファンの皆さん同様、私もこの日をずっと待っていました。

いや、実を言えば、少々不安でもありました。前作「逆襲のシャア」で監督を務め、小説版「閃光のハサウェイ」の著者でもある富野由悠季氏は、今作では指揮をとらないという。声もキャラクターやメカのデザインも変わったし、もしかしたら物語の本質まで別物になっているのではないか……みたいな不安ですよ。

ちなみに本記事には、「閃光のハサウェイ」の映画および小説のストーリーに触れる内容が含まれています。

・最高

では実際に見てどうだったのか……? 結論からいうと


_人人人人_
> 最高 <
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あらゆるネガティブな考えはかき消えて、手のひらクルックルですよ。公開されたのは3部作のうちの1作目なので、この先どうなるかはわかりません。ですが、筆者的にはもう2作目も、3作目についても信頼度100%。


・小説の映像化

具体的に最高だと思ったポイントは複数ありますが、まず来るのは展開も雰囲気も「だいたい小説通り」だったという点。「閃光のハサウェイ」は、小説がおよそ30年も前に出ています。今回初めて「閃光のハサウェイ」に触れる方も多いかと思いますが、小説で読んだファンも多いでしょう。

小説版「閃光のハサウェイ」は、小説版「逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン」の続編。そして今回の劇場版「閃光のハサウェイ」は、劇場版「逆襲のシャア」の続編ですから、その辺りの事情による根本的な設定の違いはあるかと思われます。

例えばハサウェイ的には、彼が未だに引きずっているクェスの最後や、彼自身がチェーン・アギを殺害したかどうかという、割とヘヴィな所が違っています。

他にはセリフや演出などでも細かい違いはありますが、大筋や大人向けな展開というあたりはパーフェクトに一致していたかと。とはいえ読んだのは、ずいぶん昔。念のため劇場で販売されていた新装版を購入して見返してみましたが、上巻の内容がしっかり映像化されたと言って良いと思います。


小説と一緒にパンフレットもゲットして監督のコメントを読みましたが、やはり小説の映像化を意識して作ったというようなことが書かれていました。中々に読み応えのあるパンフレットなので、皆さんも是非買って読んでみてください。


・ギギの魔性がヤバい

そしてヒロインのギギ・アンダルシアですよ。もうヤバい。これは色々揺らぐし、特に男は抗えないでしょっていう、凄まじい魔性っぷり。特にクリティカルなのが、可愛い少女的なニュアンスがある魔性ってところ。


魔性は魔性でも大人の女性のそれであれば、主義や信念、あるいは損得勘定で切り捨てやすい。大人同士だからこそ「でもそれ打算でしょ?」みたいな感じで。ところがギギの場合は、とにかくコロコロと表情が変わって子供っぽい所が多く、その少女性と魔性の合わせ技がリーサルウェポンすぎる。

例えばハリウッド映画で、主人公などがセクシーな敵の女にコロっとヤラれる展開などを見ると、「いやそんな女に引っかかるなよ」みたいにイラっとすることが多い筆者。でも、ギギにコロコロされるハサウェイやケネスを見ても、これは相手が悪かったと思えてしまう。

もし視聴者に伝わるギギの魔性が半端なものだったら、それはハサウェイたちのこの先の行動が陳腐に見えかねません。ある意味、ギギの魔性のレベルは最も重要な要素のうちの一つではないかと。凄まじいクオリティで仕上げられています。

声を担当した上田麗奈氏の演技はもちろん。パンフレットではキャラクターデザインの恩田尚之氏によるコメントを読むこともできますが、なるほど……と。パンフレットはマストバイですよ。


・ペーネロペーとΞ(クスィー)ガンダム

最後はもちろんメカです。特にペーネロペーとΞ。実は筆者、この2体のモビルスーツは、今まであまり好きじゃありませんでした。ペーネロペーはゴテゴテしすぎていて重そうだし、Ξもやたら三角形なヤツだなぁと。

どちらにせよ関節の可動域が狭そうで、デカさも相まって素早く動く姿がイメージできず「ノロマでデカい的じゃないのか?」みたいにナメてました。ミノフスキー・フライト・ユニット(小説ではミノフスキー・クラフト)を搭載していると言われても、正直よくわからないし。

いやー、見てイメージが激変しましたね。今筆者の中で最もアツいのはこの2体です。超格好いい。私の手のひらの回転速度には、例えニュータイプでもついてこれないでしょう。特にペーネロペーの動きは必見ですよ。お前そんなウネウネしながら飛ぶんかい! ってなりました。

ミノフスキー・フライト・ユニットの黄色く光る演出もクール! あれが再現可能なガンプラとか出たら絶対買いますね。また、この2機は見せ方そのものも絶妙だったと思います。

気のせいかも知れないのですが、なんだか得体の知れない薄気味悪さや威圧感みたいなものを、より視聴者に感じさせる見せ方をしているように感じました。

それで、このガンダムは兵器だなぁと。いや、ガンダムは全て紛れもなく兵器なんですが、常に描き方が「兵器であること」を重視したものとは限らない。時にはビシッと決めポーズを見せつけ、見栄えの良さをアピールしてプラモの売り上げにつなげるみたいなのもあると思うんです。

その手の演出を否定はしません。筆者自身も、そういうのを見てガンプラを買いますから。ただ、その手の演出は、視聴者としては次に買うプラモデルとしてのイメージが強くなり、命を奪う兵器なんだという設定上のあり方は薄れると思うのです。

両方の演出を上手く使い分けるのが重要なのでしょうが、今回は兵器感がマシマシだったように思えて、戦闘シーンではどちらのモビルスーツにも脅威を感じました。ちなみに豪華版のパンフレットを買うと、めちゃくちゃ細かい所までわかるメカ設定集がついてきます


とまあ興奮が冷めやらぬまま感想を垂れ流してきましたが、やっぱり気になるのは最後ではないでしょうか。小説と同じ展開をたどるとすれば、ハサウェイに待ち受けるのは、本人が映画冒頭でケネスに述べた通りのものなわけですが……。

参考リンク:機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ
執筆:江川資具
Photo:RocketNews24.