学研から発売されている「大人の科学マガジン」といえば、大人向けに創刊された季刊ムック。購入者自身が組み立てて完成する科学キットが「ふろく」となっており、ニュースなどに取り上げられることも多い。毎回楽しみにしている方も多いのではないだろうか。

かくいう自分もそのひとりで、今まで何度も購入して楽しませてもらったのだが、そんな「大人の科学マガジン」からオリジナルのレコードが作れる「トイ・レコードメーカー」が発売されていたことに大変驚いた。

なぜなら、レコードに音を刻む=カッティングは数少ない職人さんしかできない難しい作業のはずで、お金も時間もかかると聞いていたからだ。それが税込み8778円で、iPhoneなどのスマホやパソコンと接続しただけで楽しめるなんて……。何はともあれ試してみたいと思い、購入したぞ。

・開封

箱を開けてみると、大人の科学マガジンの本、ふろくの本体と組み立て用の部品、5インチのブランクレコード(音が入っていないレコード)、レコードジャケットなどが入っている。


その中でも、ふろくの組み立て用の部品は数が多くてびっくりした。


本の中身はレコード好きのアーティストのインタビューなどで読み応えがあり、これだけでも面白い。そして、後半にはふろくの組み立て説明書がある。


・ふろく組み立ての流れ

さっそく組み立ての流れを紹介しよう。やり方の詳細は説明書に書いてあるので省略するが、大まかな工程を矢印で書くと以下の通りだ。


ターンテーブルにマットを貼る

長いベルトをかける

アームスタンドとアームレスト取り付け

スライド作成・取り付け

ギアとモーター取り付け

スピーカー組み立て

基板取り付け

スピーカー取り付け

短いベルト取り付け

トーンアーム・カッターヘッド組立・取り付け


……上の他にも「部品組み立て」などがあり、全部で18工程にもなる。これらを全て行うのは想像以上に大変だった。

まず、最初の「マット貼り」で狙った位置に貼れなかった。再度貼り直そうとしたところ粘着力が強くて失敗してしまい……


ものの見事に破れてしまった。出だしの時点でかなりへこんだ。


他にも、基板を取り付ける際にうまくはまらなかったり、ベルトが外れたためにモーターを外してやり直す羽目になったり、スピーカーの取り付け向きを間違えたり……。ただ、工程1つ1つを見ると決して難しいわけではないので、器用な方ならすんなりとできるのかもしれない。


また、ブランクレコードに音を刻む針の圧力を調整する「針圧調整装置」や、その針を取り付ける「カッターヘッド」など初めて見聞きした部品や用語も多く、それぞれの役割を理解するのもひと苦労だった。


結果として、組み立て開始から完成までに1時間半もかかることに。この時点でヘトヘトになったが、本体に電源を入れ……



回った!


──となったときは、疲れが吹き飛んだ。昭和生まれの男子にしか分かってもらえないかもしれないが、小学生の頃に苦労して自分で組み立てたラジコンやゾイドが動いた時の、あの感動と似ていると思う。


・市販のレコードを聴く

さて、できたての「トイ・レコードメーカー」で、まずは市販のレコードを聴けるかどうか確かめてみる。結論を最初に言うと、7インチレコードの場合、脱着式のカッターヘッドを取れば問題なく聴けた。しかし12インチレコードは大きさが合わなかったので注意して欲しい。


また、音質は決して良くなかった。ただ、ノスタルジーを感じる音で、これはこれで楽しい。音質が良い悪いではなく、「音を楽しむ」のが音楽だと改めて気付かされた。


・オリジナルのレコードを作る

それでは、今回の本命である「オリジナルレコードの作成」にいってみよう。まず、カッターヘッドにある針圧調整器を調整する。このあたりの作業も初めての身ではよく分からなかったが、何とかなった。

なお、説明書によると針圧を調整することにより録音レベルが変わるらしい。また、針飛びしないようにボリュームやイコライザーはiPhoneで調整する必要もあるとのこと。上手くできるまで、何度も試すしかなさそうだ。


次に、ブランクレコードをセットしてその上にレコードホルダーを載せ、あらかじめ自分の曲を入れておいたiPhoneと本体を接続する。その後、カッターヘッドの針をブランクレコードに載せ、カッティングをスタートした後に曲を再生。


そうすると、ブランクレコードが回るのに合わせて、


確実にレコードの溝が刻まれていく。まさに感動だ。大げさかもしれないが、これまでの苦労が報われた気がする……!


そんなことを思っているうちにドンドン削られていき、


曲の終わりとともに、レコードのカッティングも終了した。表面には削りカスなどが付着しているが、それは流水で綺麗に洗い流せばいい。


そのあと、レコードに傷がつかないように柔らかい布などで拭き取る。そしてレコードにラベルシールを貼り、レコードを入れるジャケットを作れば、世界に一枚だけのオリジナルレコードの完成だ。


出来上がりを見ると、外観は市販のレコードに近い感じに仕上がったと思う。ふろくの組み立てからずっと半信半疑だっただけに、「本当にできた!」という感情が押し寄せてくる。

では音は? さっそく、聴いてみるとしよう。できたてホヤホヤのレコードをセットすると……


お世辞にも音が良いとは言い難い。音量が小さくてノイズもあり、市販のレコードには遠く及ばない結果となってしまった。ただ、今はレコードのカッティングを経験できた喜びの方が強いかもしれない。


・時間はかかったが……

というわけで、「トイ・レコードメーカー」で世界に一枚しかないオリジナルのレコードを作ってみたが、ふろくの組立の工程が多く時間がかかった。また、肝心のレコードに音を刻むカッティングは難しい。曲によって音量や音質が違うことも多く、それに合わせての調整もしなければならないからだ。

とはいえ、初めての私でも何とか出来た。なにより、ふろくの組み立てからオリジナルのレコードを作るまで、大人でも充分に楽しめる内容であることは間違いない。なので、音楽好きの方はもちろん、童心に帰ってふろくを組み立てる楽しみを味わいたいという方はぜひ試して欲しい。


参考リンク:大人の科学マガジン「トイ・レコードメーカー」
Report:Kg
Photo:RocketNews24.

▼ブランクレコードは黒・白・黄緑・水色が購入できるので、お好みに合わせて選べるぞ。