2020年は新型コロナウイルスの世界的な流行で、とても暗い1年になってしまった。当初開催予定だった東京オリンピックは2021年に延期となり、人々の生活様式はすっかり変わってしまった。こんなときこそ、笑いが必要なんじゃないのか?

今まさに必要とされるゆるい笑いを届けてくれる映画が12月18日から公開される。世界的俳優キアヌ・リーブスが若き日に出演していた映画『ビルとテッド』シリーズの最新作が日本でも公開されるぞ! ロック好きな人はぜひとも見て欲しい、素敵なコメディ作品だ。

・29年ぶりの新作

このシリーズは、1989年に1作目『ビルとテッドの大冒険』、1991年に2作目『ビルとテッドの地獄旅行』が公開されている。それに続く3作目『ビルとテッドの時空旅行』が29年ぶりとなる新作だ。音楽好きの2人の若者がロックの力でさまざまな問題を解決し、世界を救うというゴキゲンな設定の物語。キアヌ・リーブス演じるテッド・ローガンと、アレックス・ウィンター演じるビル・プレストンのドタバタコメディである。


・ビルとテッドは原点

キアヌ・リーブスといえば『ジョン・ウィック』『マトリックス』など、代表作品を挙げればキリがないほどのトップスターだ。孤独で1匹狼的な役柄の多い彼が、コメディを演じると想像できない人もいるかもしれない。

すっかり渋い男が板についた彼だが、89年のビルとテッド1作目の大ヒットにより、その名を知らしめることとなった。91年に2作目が公開された後に、故リバー・フェニックスと共演した『マイ・プライベート・アイダホ』、94年『スピード』などヒット作が続き、世界的スターへとのし上がっていった。つまり『ビルとテッド』シリーズはある意味、彼の原点でもある。


・今作のあらすじ

さて本作は、ノーテンキなロックバカの2人が、世界的なアーティストにのぼり詰めた後の話だ。ロックスターになったはずの2人は、30年の歳月の間に落ち目になったものの、音楽への執着を捨てきれずにいた。というのも、彼ら(結成したバンド「ワイルド・スタリオンズ」)の音楽が世界を救うと予言されていたからだ。しかし、まともに曲も作れずに時間を空費する日々。そんな彼らの元に未来からの使者があらわれて……。


従来のキアヌ作品であれば、ピリピリとした緊張感が絶え間なく続き、呼吸を忘れるほどスクリーンに食い入るところだが、この作品にそんな緊張感は全然ない。ずっと安心して観ていられる。ところどころに散りばめられたロックのエッセンスと軽いユーモア、そして意外な人物のカメオ出演にも驚かされる。え? この人、こんだけ? というシーンもちょいちょいあって面白い。


・ロック好きは「フフ……」

20代の前半に1・2作を見た私(佐藤)はビルとテッドが大好きだ。サウンドトラックを買って、車でガンガン流していたほど大好きなコメディ作品である。そんな期待をもって29年ぶりの最新作を観たが、若き日の2人のハイテンションバカっぷりはもうなかった。あの当時のエネルギッシュな演技は、あの当時だから出せたものだ。

しかし、2人が歳を重ねたからこそ出せるおバカ加減が非常に心地いい。普段は「死と隣合わせ」みたいな緊迫した役どころの多いキアヌが、だらしないテッドを演じる様子は可愛らしくさえ見える。またアレックス・ウィンターとの呼吸もバツグンだ。29年間ずっと連れ添ったんじゃないか? と思うほど、2人の間が良い。


今年は新型コロナの影響で緊張が続く1年だった。少し気分をゆるめたいという人は、ぜひとも劇場でこの“どうしようもなく” 素晴らしい2人のおじさんの活躍を見て欲しい。ロックが好きな人はとくに、思わず「フフ……」となるシーン満載だ


・今作の情報

タイトル「ビルとテッドの時空旅行~音楽で世界を救え!~」
公開日 2020年12月18日
全国の主要劇場で放映予定


執筆:佐藤英典
Photo:RocketNews24