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連日暑い! 特に東京は暑いが、全国的に暑いという。もう、扇風機マッタなし! な状況だ。 ここ2週間ほど家電量販店各店の扇風機売り場を定点観測していたのだが、昨年の在庫一掃も終わり、やっと今年の新製品が並び出した。

もう、選り取り見取りである。 ここで、毎年語っていることではあるが、大事なことなので口を酸っぱくしてでも扇風機選びに必要なこと、まずはそれについて語らせていただきたい。 こんな扇風機があるぞ! この会社のこの技術はスゴいぞ! という話は今年もたくさんあるのだけれど、まずは、選ぶ際の基本事項のおさらいである。

・扇風機選びのポイント3つ

1. モーターの種類

扇風機のモーターには、「ACモーター」と「DCモーター」、2種類ある。 ACは、昔から使われてきた技術。 こなれてきているので調達価格も安く済み、結果売値も安くなる。 ただし、これ微風を出し続けることに関しては滅法弱く、弱・中・強くらいしか風量を選べない。

夜寝ている間に微妙な風を浴び続けたいという需要にはそぐわない。 また、使用電気料金も高くなる傾向がある。逆に、DCは、微風が出せる、消費電力が安く済むというメリットがあるが、まだまだ調達価格が高いようで、売価は高くなる。1台2万円程度になる。

企業側も、ただ従来売っていた扇風機のモーターを乗せ替えただけで、倍以上のカネをとるのは心苦しいのか、ならば付加価値をつけよう、ということになっている。美しい質感や有名デザイナーの手による造形、住空間をトータルコーディネートする発想のユーザーインターフェイスなどだ。まずは、ここを勘案し、自分が求めているのはどんな用途なのか、よくよく考える必要がある。

2. 設計上標準使用期間

扇風機には必ずどこかに、「設計上標準使用期間」というものが記載されている。 これが、一流メーカーの3万円する扇風機は11年、などとなっているが、ホームセンターで1500円で売っているどこのメーカーかもよくわからないような扇風機は4年。こんな短い期間を平気で書いている。

べつに10年使わないかもしれないが、最初から「すぐ壊れますよ」と宣言されているものを買うのはどうなのか。 “安物買いの銭失い”、というコトワザを、よくよく噛み締めて吟味する必要があるだろう。

3. 独自の技術

もう扇風機というものは基本構造が確立されており、まさに「枯れた技術」で戦う、レッドオーシャンな市場と化している。そこで、競合優位性を発揮するためにはどうしているのか。数少ない改良できそうな点、他と差別化できそうな点。それは、羽根の形状だ。

たとえば「SHARP」は、動物の羽根を参考にしたとして、鳥や蝶に学んだ羽根の形にしている。家電の研究者が、何日も何日も蝶々の解剖をして、鳥や蝶から学んだ扇風機の羽根をつくっているのだ。かたや「ツインバード」は、“初心に帰ろう” とばかりに流体力学の基礎の基礎をおさらいし、扇風機の羽根に活かした。

生活家電メーカー「ドウシシャ」の羽根はカモメに学んだそうだ。そしてオシャレ家電メーカー「プラスマイナスゼロ」の扇風機の羽根には、微妙な溝が付いていて、その溝で風を遠くまで優しく届けられる。細かいことだが、これらメーカーの開発努力はすごいことなのだ。買うからには、そのあたりが自分の思想とどこまでマッチングするか、共感できるか、よくよく考慮の上決めるべきだろう。

・それでも、最後は情熱で買おう

色々語ってきたが、上記を踏まえた上で、最後の最後はやはり “情熱” だと思う。どこまで、その設計者に共感できるか。 どこまで、そのデザインに惚れ込めるか。それがあれば、仮に高い買い物だとしても一切の後悔なく、むしろ誇らしく長年利用できるだろう。

……次回以降は、あっとビックリ! こんな扇風機、あっていいの!? なんなんだこれは! という期待のニューカマーを紹介しよう。 乞う、ご期待!

執筆:扇風機評論家 ・星野祐毅
Photo:Rocketnews24