2020年6月27日の公開が予定されていた『シン・エヴァンゲリオン劇場版』。コロナ禍で公開が延期されることが発表されたのは2カ月以上前のことで、今も公開日は告知されていない。

Qを映画館で見て以来8年。待ちに待っている作品だけに、この2カ月くらいのエヴァンゲリオン新劇場版シリーズの配信や放送はますます期待の膨らむものだった。2020年7月6日現在は、Amazonプライムやhuluなどの14サイトで配信中である

そういった配信で何往復もしていると、劇場では見えなかったものが見えてきた。そんな私(中澤)が『シン・エヴァンゲリオン劇場版』に期待することがある。

・ネタバレあり

『序』『破』『Q』と3作が公開されているエヴァンゲリオン新劇場版。その中で『序』から『破』の後半くらいまでは、テレビシリーズに似て非なる展開が続く。しかし、『破』の後半から一気に物語が加速して見たことがない話へと展開していくのはテレビシリーズも見た人ならご存知かと思う。

私が最初に『破』を観たのは吉祥寺の映画館だが、映画が終わった直後、会場がスタンディングオベーションの嵐になった。映画館なのに。それほどに当時『破』の最後で起こる出来事は衝撃的だった。


……と、話を進める前に。ここから先はガンガンネタバレしていくので、最終作が公開されてから一気見しようと思っている人はここで回れ右してくれ。以下からネタバレを含む内容である。

・『破』のラスト

さて、話を戻すと、『破』の最後に出てくる使徒はゼルエル。あのテレビシリーズで初号機が暴走して食い散らかされるヤツだ。新劇場版でもやっぱりゼルエルは強いんだけど、シンジ君が頑張ってなんとかする。

の・だ・が! 頑張りすぎてここでサードインパクトみたいなのが起こってしまう。リツコさんもこの時点で「サードインパクトが始まる」と言っている。そして、エンディングテーマが流れた後、宇宙から舞い降りたカヲル君がこれを止めて『破』が終幕。『Q』へと続くわけだ。

次回予告では「レイとシンジを取り込んだまま凍結されるエヴァ初号機」とか「幽閉されるネルフ関係者」とか「ドグマへと投下されるエヴァ6号機」とか気になる単語が飛び交う。

・『Q』の始まり

で、当然『Q』は『破』の続きが描かれるかと思いきや、いきなり宇宙でアスカとマリがエヴァンゲリオンで使徒と戦うシーンから始まる。どうやら、宇宙にいるシンジ君とエヴァ初号機を助ける過程のようだ。

ってちょっと待たんかい。なんで、『破』の最後で地球にいたシンジ君と初号機が宇宙にいるねん。多分、これが『Q』で多くの視聴者が最初にぶち当たる謎かと思う。で、見てると14年後であることが分かるわけだが、それでもなんでシンジ君が宇宙に打ち上げられたかなどの説明はない。

おまけに、『Q』の中盤では、サードインパクトが起こった後であることが判明する。ちょちょちょっ! 『破』の最後でカヲル君がサードインパクト止めなかったっけ? だが、シンジ君と視聴者が世界の惨状を知るのは誰あろう、そのカヲル君の案内なのである。

・『Q』の謎

そんな謎に代表されるように『Q』は謎だらけの作品だ。大まかに多くの人が引っかかるポイントをあげると以下のようなものがあるだろう。分かりやすくするため関西弁で突っ込んでいきたい。

シンジ君なんで宇宙にいるねん
サードインパクト止まったんちゃうかったんかい
シンジ君が助けた綾波どこいってん
地下で槍抜いたらエヴァが使徒になる下りしっちゃかめっちゃかすぎへんか

──上記のようなシーンのオンパレードから「謎の作品」とか呼ばれていたりするわけだけど、何往復もしていると、この謎が意外と説明されていることに気づいた。例えば、止めたはずのサードインパクトがなぜ起こっているのか?

・サードインパクト

これは、『Q』でシンジ君に世界を見せた時のカヲル君のセリフを注意深く聞くと見えてくる。カヲル君は『破』の最後のシーンについて「サードインパクトのトリガーとなった」と語る。「リリン(人間)の言うニア・サードインパクト」と。

このセリフを踏まえて作品を見ると、「ニア・サードインパクト」と「サードインパクト」を各キャラがなんとなく使い分けているような節がある。つまり、『破』の最後で初号機がカヲル君によって沈黙させられたシーンとは別に、サード・インパクトが起こっているのではないだろうか

・予告が2作品を結ぶ

そして、テレビシリーズと旧劇場版を見た人なら知っていると思うが、サード・インパクトが起こる条件は地下のリリスと使徒の接触である。つまり、『破』の後にテレビシリーズ~旧劇みたいな流れがあってサードインパクトが起こってからの『Q』なのではないか。

その断片が『破』の予告。予告は事実起こったことであり、その結果『Q』に至ったと考えると、シンジ君がなぜ宇宙にいたのかも分かる。要するに、凍結された結果が宇宙打ち上げへとつながっているのだ。

で、予告で「ドグマへと投下されるエヴァ6号機」と言っており、事実、『Q』では地下のリリスに6号機が乗っている。その6号機とリリスに刺さった槍を抜いたら、13使徒が復活しているため、ドグマへと投下されたエヴァ6号機に使徒が憑りついていて、リリスと使徒が接触したことが想定できる。ここでサードインパクト発生だ。

あとは、綾波がどこにいったかだが、これはテレビシリーズを見てたら分かると思う。テレビシリーズでも、シンジ君と初号機のシンクロ率が400パーを越え、シンジ君がエントリープラグの中でL.C.Lに溶けてしまう回があった。「破」の最後ではシンジ君は相当突っ込んでいるため、綾波は溶けたのではないだろうか

・謎とは別に期待すること

と、以上は何往復もして思い至ったことだが、『Q』公開から8年も経ってるし、まあこれくらいの考察は普通にネットでされてるだろう。私が思いつくくらいだし、そもそも全部作中で言われてることだし

というわけで、これまでのエヴァの雰囲気を考えると、特に『シンエヴァンゲリオン劇場版』でも言及されない気がしている。ただ、そんな謎とは別に、私が描かれていたらいいなと思ったことが3つある。それが以下だ。

・マリは何者か?

『破』からの新キャラ真希波・マリ・イラストリアスは、活躍する割に謎しかないキャラである。『破』では「自分の目的に大人を巻き込むのは気後れするな」というセリフがあるがマリの目的って何だろう?

また、『Q』のクライマックスでは、綾波に「あんたのオリジナルはもっと愛想があったよ」と言う。オリジナルとは、『破』の綾波のことか、それとも、綾波の基になった碇ユイのことか

さらに、同じクライマックスのシーンでマリは碇ゲンドウのことを「ゲンドウ君」と呼んでいた。そのため、エヴァの呪縛にかかって成長しなくなったゲンドウとユイの同期的な人物かとも思ったのだが、『破』では「エヴァとのシンクロって聞いてたよりキツイじゃん」というセリフもあるので、エヴァに乗ったのは登場シーンが初だと思われる。う~ん、謎だ。

・加持リョウジ

『破』の予告で拳銃チラつかせていたのでおそらく死んでいる。しかし、私はテレビシリーズの頃から加持さんのファンだ。「彼女というのは遥か彼方の女と書く。女性は向こう岸の存在だよ、我々にとってはね」というイケメンならではの悟りのセリフは今もことあるごとに頭をかすめる。

『Q』で空中戦艦ヴンダーの乗組員の口から名前が出ただけで胸が熱くなった。願わくば、死んでるにしてもちょっとだけ思い出して欲しいものである。

・ゼーレ

『Q』では、ゲンドウがゼーレに対し、「魂の形を変えたとは言え知恵の実を与えられた生命体」や「死を背負った群れの進化を進めるために、あなた方は我々(人類)に文明を与えてくれた」と言っている。

このことから、作品の中では現生人類の前の存在とか宇宙人とかそういうノリなのかなと思わなくもない。なんかどっちもしっくり来ない。なぜなら、作中に登場する重要な名詞は、「エヴァ=イヴの別読み」「アダム」「リリス」「リリン」とほとんどが聖書から来てるのに、ゼーレだけ関係ない感じがするから。リリンより前で知恵の実食べたって誰だよ? シンプルにモヤッとする。

──以上、今さら加持さんとゼーレが深掘りされることはないかもしれないが、せめてマリの過去は描かれて欲しいものだ。とは言え、そんな予想を裏切ってくるのがエヴァンゲリオンでもある。それも含め、『シン・エヴァンゲリオン劇場版』の公開が待ち遠しい。

気づいたら長々と書いてしまったが、いかがだっただろうか。こんな長文を最後まで読んでくれた人にはお礼を言いたい。あなたに、ありがとう。本記事に、さようなら。そして、全ての読者達(チルドレン)に……おめでとう

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.