メッセージ性の強い落書きや予測不能な活動で、たびたび世間をにぎわすバンクシー。先日のオークション会場で、落札直後に自らの作品をシュレッダーにかけてみせた事件を覚えている方も多いだろう。

正体不明の芸術家として知られる彼だが、今度は水の都ヴェネツィアにてぶちかましてきたようだ。舞台は現在開催中の国際美術展覧会「ヴェネツィア・ビエンナーレ」。由緒正しいこの展覧会に勝手に作品を持ち込むも、ポリスに見つかって追い出されているぞ

・ヴェネツィア・ビエンナーレ

一連の流れは本人のインスタで見ることができる。



バンクシー「Setting out my stall at the Venice Biennale. Despite being the largest and most prestigious art event in the world, for some reason I’ve never been invited.」(ヴェネツィア・ビエンナーレに屋台を出してみた。最も大規模で栄誉あるアートイベントなのに、なぜか招待されないんだよね)


ゲリラ展示された絵のタイトルは「VENICE IN OIL(ヴェネツィアの油絵)」。1隻の巨大クルーズ船がヴェネツィアの運河を航行する様子が、分割された複数のキャンバスを用いて描かれている。そして横には顔を隠した男性の姿も。

程なくして、許可証がないことがバレたのだろう。複数のポリスに「ここに居ては駄目だ」と追い出されることに。最後は絵のモチーフになったと思われる巨大クルーズ船が警笛を鳴らす様子とともに動画は終了。

一見すると何のことはない、いつもどおりバンクシーがやらかしただけに思えるこちらの動画。しかし、バンクシーといえばその作品に込められる強いメッセージ性もまた特徴のひとつ。


・環境汚染がテーマか?

ここからは筆者の推測だが……今回のバンクシーの絵画および動画は、どちらもヴェネツィアの抱える環境汚染の問題がテーマなのではないだろうか。実はヴェネツィアには、来航する大型クルーズ船による環境汚染に悩まされているという背景がある。

過去には英メディア「The Guardian」が、非公式の投票において約2万人の住民グループがクルーズ船の来航を規制する案に賛同した件を報じたことも。しかしクルーズ船でやってくる観光客はヴェネツィアの大きな収入源でもあるため、住民たちの訴えは退けられている。

ちなみに巨大クルーズ船による環境汚染とは、巨大クルーズ船の搭載された電気式ディーゼルエンジンによる排気ガス……ひいては燃料の元である重油によるもの。「VENICE IN OIL」は「重油まみれのヴェネツィア」という意味でもある……のかもしれない


・数日前には水路に落書きも

話は変わるが、実はバンクシーによってこの動画が公開される数日前に、ヴェネツィアの水路にバンクシーの関与が疑われる落書きが発見されており、フランス通信社などが報じていた。

本人の投稿でヴェネツィア入りしていたことが確定した今、この落書きがバンクシーの作品である可能性は高くなっただろう。ヴェネツィアに新しい観光スポットが誕生してしまったかもしれない。水路の壁に描かれているそうなので、ゴンドリエーレ的には収入アップにつながるのかな?

参照元:Instagram @banksyThe Guardian、Twitter @AFP(英語)
執筆:江川資具

▼水路で発見されていたバンクシーっぽい作者不明の落書き