子供が生まれたら気になるのが「ママ友事情」。ひとり育児はシンドイし一緒に話せる仲間が欲しいものだ。

私も当時、周りに子供がいる友人がいなかった。子供がいる友人はみんな遠方。LINEなどでやり取りはしていたが「身近にもママ友ほしいな~」と思っていたものだ。そんななか……一生涯忘れられない “ママ友” に出会った。

・ママ友に「家に遊びにおいで」と誘われた

その “ママ友” とは子供が0才の頃に児童館で出会った。イベントでたまたま隣に座ったのだ。出会い初日は「何カ月ですか~」など、あたりさわりのない会話で終了。その後、何回か顏を合わせているうちに知り合いになり、LINEを交換して子育て情報などをやりとりするようになった。

そうして出会って3~4カ月が経った頃。「家でビニールプールを出すんだけど一緒にどう? 花火も買ったよ!」と連絡が来たのである。

・謎のマダム乱入

当日、ママ友とママ友母が温かく迎えてくれた。子供たちは初めてのプール遊びに大はしゃぎだ。今度はうちにご招待しよう~と思いつつ、着替えさせようとしたら、ママ友母が神速で近づきうちの子を抱き上げた。

ママ友母「これね~すごくいいのよ~低刺激で赤ちゃんにも使えるのよ! うちの孫もお風呂上りにいつも使ってるの♪」

と、見たことがないメーカーのオイルを塗ってきたのだ。

おい! 他人の子供によーわからんオイルを塗っちゃう!? とビックリ。しかし子供の肌に異常はなかったし、「まぁ親世代ってこんなもんだよな」と飲みこんだ。


──だがこれは完全に予兆だったのだ。


♪ピンポーン♪


インターフォンが鳴り、「入るわよ~!」と謎のマダムがやってきた。ここからが本番だったのだ。

・抱っこされる子供、手を洗われる私!

マダムはママ友母の友人で、先の謎の化粧オイルの販売者だという。そしてすごい早口でこう話し始めたのだ。

マダム「あら~! お友達?? お子さん0才? お孫ちゃんと一緒ね! 育児で自分のお手入れとか大変でしょう!? おばちゃんもそうだった! 自分のケアとか全然できないわよね! そうそう今日ちょうどいいもの持ってきたのよ。この石鹸ね、洗うだけで汚れも落ちるし肌もしっとりするの。化粧水いらずよ! せっかくだしちょっと試してみない?」

ママ友母「赤ちゃん、抱っこしていてあげるね♪」

子ども抱っこされてもたー! 人質かァァァ!!!! ダメだ、事を荒立てずに脱出することは不可能。

ママ友「もう、おばちゃんたら強引! 困ってるじゃない~」


ナイス助け船! 

と思ったら、口ではそう言いつつテキパキと洗面器とお湯を用意って何事だよ!?

考える間も与えずやっちまえ作戦か、私いろんな詐欺案件を記事化してるロケットニュースの者だよ、そんなものには乗らねえよ! しかし、ここは完全アウェイ。子どもも抱っこされてしまったし「事を荒立てず」を第一にした方がいいかと、例の石鹸で手だけ洗ってもらうことに……。

もう帰ろう。花火はいらん。

・マルチ商法だった

謎のマダムに腕を洗われた私。「気に入ったら教えてね♪」とお土産に石鹸のサンプルを渡された。いらんわ。テキトーに理由をつけて帰宅することにし、石鹸をクッションに隠して帰ろうとしたら……


ママ友「忘れ物だよ♪」


と笑顔で渡されたのだった。バレてたァァァア!!!!

家に帰って調べてみると、超有名ではないもののソコソコ名の知れたマルチ商法と判明。遊びに行ったらマルチ商法が来た。いい気はしないし、洗われた手はかゆくなるし、もう気持ち的に踏んだり蹴ったりだよ!

・ママ友と思ったら「カモ認定」だったは「よくある話らしい」

ママ友の家に行ったらマルチ商法だった、ネットワークビジネスだった、宗教勧誘だったという話はわりとあるらしい。

あーーーそういえば自分が小さい頃に住んでいた団地にもいたわ、マルチおばちゃん。親に連れられて遊びに行ったら子供そっちのけで、集めたママ友に商品紹介をしていた記憶がある。

・カモにならないために

さて、私の場合は「遊びに行った → マダム乱入 → マダムに勧誘されかかる?」という構図であり、ママ友自身が私をカモろうとしていたかは定かではない。

だが「全員がグルだった」と仮定してみよう。

あくまで仮定だが、その場合、私がターゲットになった理由は


「友達がいなくて寂しそう」


だったのではないかと思う。思えば寂しいというか、私は焦っていた。初めての子育てで何が何やらわからず、地元ではないため地域の事情もわからず、とにかく「悩みを共有したり情報交換ができる友達」がほしかった。

そこをつかれたのかもしれない。問題なく仲良くしていた時期は「信頼させ、断れなくする立派なカモへの養成期間」だったのだろうか。

たしかにママ友は育児のうえで頼りになる仲間だ。しかし、この経験からこう思うようになった。


「焦ってママ友を作りにいく必要はない」


話すのは児童館で1回きり会う人でいいじゃない。そのなかから話が合う人と出会えればラッキーだ。焦ると変なのが寄って来るので、カモられないためには自然体でいるのが一番である。

子供が保育園にあがれば保育園ママと知り合えるし、子供同士で遊ぶようになれば自然と親同士の交流も始まるだろう。実際に私も数年かけて自然と親しい人もできてきた。これでいい。

ちなみに石鹸マダム事件のあと、例のママ友がどうなったかというと……「なんかおばちゃんがごめんね、また誘ってもいい?」というLINEが来て「気にしてないよー! また遊ぼう」とやりとりしたきり。私大丈夫って言ったのに、なんでかな?

執筆・イラスト:沢井メグ
Photo:RocketNews24.