「今年は冷夏だね~」などと、夏を舐めていた数カ月前の自分にグーパンチを喰らわせたくなるほど暑い。ここぞとばかりに大量発生する虫どもにもグーパンチを喰らわせたいところだが、それは気持ち悪い。仕方がないので冷房の効いた部屋に閉じこもるが、これでは自分の方が虫かごの中にいるようだ。

そんな悩みを一手に解決する方法を見つけてしまったので紹介したい。それは “女性向け” 昆虫食「MOGBUG」である。憎き虫どもを駆逐しつつ、高タンパク低カロリーの昆虫たちから栄養補給、さらにインスタ映えまで狙えちゃう、一石二鳥ならぬ一石三虫な自販機だ!

・広がりを見せる昆虫食

以前の記事でジビエ専門店「米とサーカス」による都内初の昆虫自販機を扱ったが、MOGBUGをプロデュースしたのも同店だ。ロケットニュースのライターはやたら昆虫を食べる。「昆虫食」で検索をかけると記事が10件以上ヒットするので、合わせてご覧いただきたい。


秋葉原駅から歩くこと1分、お肉とチーズのダイニング「ラフィーネ 秋葉原」の前にMOGBUGは設置されている。そんな目立つ場所ではないが、私(瀧川)の前に先客がいた。写真を撮っている最中も2組のお客さんが訪れ、その人気っぷりが伺えた。

”女性向け” というだけあって、ピンクとエメラルドグリーンの本体にカラフルなパッケージが並ぶ。原宿のタピオカ屋さんの前にあっても違和感ないというか、インスタスポットにさえなりうるポップさだ。売ってるのは虫だけど。


販売されているのはクリケットエナジーバー(500円)、ローストクリケット(800円)、そしてMOGBUG(1000円)だ。あと米とサーカスのオリジナル手ぬぐいも売っていたが、虫じゃないので無視……ナンチャッテ。

それぞれ1つずつ買って帰ろう。エナジーバーのブルーベリー味と、ローストクリケットのBBQ味。MOGBUGはサソリ、コオロギ(クリケット)、スーパーワームの3種類がある。地獄のような3択である。既にコオロギは2つ買っているし、スーパーワームはあまりにも気持ち悪いからサソリにしようかな、かっこいいし。

その時、炎天下の中、おじさんが自転車を漕いでやってきた。


「暑いですねー、何か買うんですか?」
おじさん「サソリにしようかなぁ、インパクト強そうだし」
「サソリ凄そうですよね笑。高級食材とか書いてありますし!」
おじさん「それじゃ、家でゆっくり食べますー」


やっぱりサソリだな。流されやすい性格の私は決意を固めた、しかし……。


\ \ \ まさかの売り切れ / / /


・謎の生命体「スーパーワーム」

なんてツイていないんだ。逃がした魚は大きいとはよく言ったもので、めっちゃサソリ食べたくなってきた。とはいえ汗だくでチャリを漕いでいたおじさんは責められないし、MOGBUGの人気っぷりが伝えられたってことで良しとしよう。大体サソリって昆虫じゃなくね?

仕方がないのでスーパーワームを購入することに。聞いたこともないので、どんな生き物なのか想像もつかない。胸にSの字を描いた往年のスーパーヒーローや、初代仮面ライダーの絵が頭に浮かぶ。不安なのでネットで調べてみた。


以下はスーパーワームについて調べて分かったことだ。

■スーパーワームは別名「ミールワーム」。見た目がスーパーグロい
■成虫の名前は「ゴミムシダマシ(ゴミ虫騙し)」。最上級の悪口みたいな名前。
■ペットの食料としても利用されるが、その胃を食い破って返り討ちにしたという都市伝説がある。

私は震える指でスーパーワームのボタンを押し、涙をこらえながら自宅に戻った。

・いよいよ虫、食べまーす

さて、改めて今回購入したものを並べてみよう。

■クリケットエナジーバー ブルーベリー & アーモンド(500円)
■ローストクリケット BBQ(800円)
■MOGBUG スーパーワーム(1000円)

値段の安いものの方が食べやすそうなので、上から順番にいざ実食。


まずは一番イージーそうなクリケットエナジーバー。原材料はヒマワリの種や干しブドウなど、そして少量のクリケットプロテインパウダー。虫感は弱いし、ヘルシーで美味しそうだ。

食べる前に、とりあえず嗅いでみる。クンクン、クンクン……。


うぇ~…。麩菓子の亜種みたいな匂いだ。あまり好きではない。少しかじってみた。


うーん、食べられる。でも単純に味付けが好みじゃない……。ねっとりとした麩菓子にブルーベーリーの酸味を混ぜた感じ。だけど虫感はないし、初心者向けであることは間違いない。


続いてはローストクリケット。先のエナジーバーは申し訳程度にしかコオロギは入っていなかったようだが、これにはガッツリ「食用ヨーロッパイエコオロギ」と書いてある。わざわざヨーロッパから来てくれたんだね、ようこそ日本へ。いただきます。


おっと忘れてはいけない、匂いチェックタイムだ。クンクン、クンクン……。


好き! というかBBQ味の匂いしかしない! 目をつぶったらポテチと変わらんわ。


では見た目はどうか、お皿に盛りつけてみた。うおおおお、見た目はパンチ効いてる! しっかりコオロギさんの姿が確認できる。でも良い匂いだし、食べられる気がする。一匹口に入れてみた。


サクッ、サクッ、サクッ…、やっぱね! これはイケる、美味しい! エナジーバーよりも食べやすいくらいだ。最後はポテチの如く、袋ごと口に放り込んでしまった。


・大ボス、スーパーワーム登場

最後はお待ちかね、MOGBUGのスーパーワームである。先のコオロギで昆虫食には慣れてきたが、スーパーワームは別格だ。なんてったってペット殺しのゴミ虫騙しだもの。

しかもよく見ると、「Boiled & Dehydrated. Not Fried(茹でて乾燥させました、揚げてません)」と書かれている。健康的なのは有り難いが、コイツは油でカラッといって欲しかった…。写真を撮るためにとパッケージを裏返し、原材料を見た私は愕然とした


スーパーワームと、塩だけ? いやいや待ってくれ、田舎のおばあちゃんの味付けか。原産国であるタイのおばさんが「余計なものはいらんべ、塩だけで食うのが一番うまいんだべ」と力説している姿が目に浮かぶ。


外袋を開けてパッキングされたスーパーワームとご対面。これモザイクかけた方がいいかもしれない。苦手な人は、ささっとスクロールしてください。


ウジャウジャいるから気持ち悪いのかもと思い、一匹だけつまんでみた。残念ながら個でもキモい


ここにきて女性向け昆虫食というコンセプトを思い出した。可能な限りインスタ映えしそうな感じに盛り付け、匂いを嗅いでみた。


シュリンプカクテルみたいな感じにしたかったが、虫々しすぎてて魔王の飲み物みたいになってしまった。でも匂いはなんというか、説明できないけれど悪くない。しかし怖いなぁ、胃袋食い破られないかなぁ。どんな食感なんだろ……。百嗅は一口に如かず、一匹口に入れてみた。


モグバグ、モグバグモグバグ…..。


悪くない! というか、どっちがというと好き! 別に臭みは無いし、サクサク食感が癖になる。パクパクいけちゃうタイプのおつまみという感じだが、さすがに塩だけでは味に飽きてきたのでレモン汁をかけてみた。


これもこれで良い! 居酒屋の定番メニュー小エビのから揚げみたいな感覚だ。ハイボール飲みたい。その後も次々と口に放り込み、ついに完食してしまった。


・女子ウケ必至のネクストフード

女性向け昆虫食というコンセプトはネタだろうと思っていたが、可愛い、美味しい、ヘルシー、エコロジーの四拍子がそろったネクストフードだった。少々お値段はするものの、刺激を求める女子はMOGBUGを見逃しはしないだろう。

今や体の一部となった虫たちだが、向き合ってみれば悪い奴らではなかった。今後は彼らともうまく共生していけそうな気がする。


参照元:宮下企画公益社団法人農林水産・食品産業技術振興協会
Report:瀧川丈太朗
Photo:RocketNews24