時たま「あなたにとっての母の味って何?」と聞かれるが、特に思い当たらない。母の名誉のために言っておくと、彼女は料理上手だった。レパートリーの幅も広かったように記憶している。記者は子どもの頃、そんな母の横で手伝いをしていたためか、いざ独り暮らしを始めてみても料理を作ることで困ったことはない。

まあ何を食べても美味しかったので、特にコレがというものが思い浮かばないのかもしれない。さて……これくらい持ち上げとけば良いかな。良いよね。そんな母が、時どき箸休め的に作るモノがあった。我が家では “イカくん” と呼ばれていたが、久しぶりに食べたくなったので作ってみるとしよう。

・ノリコちゃんの母の味だった

そもそも “イカくん” のイカくんって何ぞや、という話だが、そのままの意味でイカの燻製のことだ。それも、ていねいに燻(いぶ)したものなんかでは決してない。酒のつまみ売り場に置いてあるような、アレである。我が家ではコープ商品の “しっとりくんさきいか” を多用していたはずだ。

その燻製とセロリとをタッパーに入れ、市販のドレッシングに付ける。そして冷蔵庫で寝かせれば、我が家の “イカくん” は完成だ。なにかというと、ちょっとした一品としてこの “イカくん” は食卓に上がった。母がさも親しげに “イカくん” と呼ぶので、つい先日までオリジナルレシピと思っていた。

がしかし、どうやら違うことが判明。よくよく聞いてみると、記者の同級生・ノリコちゃんの母親から教えてもらったレシピだったらしい。ノリコちゃんの母親と言えば、パンを焼くのも上手だった。ノリコちゃんの家の誕生日会は豪華だったような覚えがある。ノリコママは料理が好きなんだろうな。

さて。作り方は上記した通りなので、わざわざ尺を取ってお知らせするまでもない。しかし簡単すぎて逆にイメージがわかない場合もあるかと思われるので、念のために書いておくことにしよう。

【材料】

市販のイカの燻製:ひと袋
セロリ:好きなだけ
市販のドレッシング:1本

【作り方】

1. タッパーにイカの燻製と適当にスライスしたセロリを入れる。

2. 好みのドレッシングを入れる(我が家は和風ドレッシング)。量は適当に調整。

3. 冷蔵庫で1日程度寝かせて完成

・母がたびたび作っていた理由を察する

驚くほど簡単であることが、おわかりいただけただろう。料理と呼ぶほどのモノでもないかもしれないな。でもね、これが美味しいのよ。子どもの頃は気が付かなかったが、大人になって食べてみるとよりクセになるというか……酒にめっちゃ合う。特にビール。

記者の母はまあまあ酒を飲むほう(本人は否定する)だからか、これは完全に酒のアテである。なるほどねえ、頻繁(ひんぱん)に作っていたわけだ。納得。肝心の味であるが、イカくんが良い働きをしている。以下の燻製の香りと塩気がドレッシングに染み出し、セロリに浸透してウマい。豆腐とかにかけても美味しい。

何も考えずに口に入れていると、あっという間に食べ終えてしまうので要注意である。しかしまあ、母の味を再現することで子どもの頃は見えなかったものが見えるとは。そんなこともあるんだなあ。あなたも “昔食べていたアレ” を久しぶりに作ってみてはいかがだろう。意外な発見があるかもしれないぞ。

Report:K.Masami
Photo:Rocketnews24.

▼母のオリジナルじゃなかった「イカくん」ビールに合うよ

▼気を付けるのは、セロリの筋を取ることくらいか……暑い季節にもピッタリ! 

▼母とのライン。ノリコちゃんのお母さんから教わったレシピらしい