2021年2月25日、満を持してNintendo Switch『牧場物語 オリーブタウンと希望の大地』(税抜5980円)が発売された。シリーズ25周年というロングセラーながら、久~しぶりの完全新作。

長年のファンはもちろん、『あつまれ どうぶつの森』をきっかけにスローライフゲームに興味をもったプレイヤーもいるのでは? 序盤をプレイしたので、ファーストインプレッションをお届けしたい!


・おじいちゃんの牧場を復興せよ

かつておじいちゃんが暮らし、いまは無人になって荒れ果てた牧場を復興するのがゲームの目的。

火曜サスペンス劇場が犯罪から始まるように、また「どうぶつの森」がたぬきちからの借金で始まるように、これはシリーズ恒例の展開だ。

今回はテント暮らしからスタートするというガチの貧乏生活。まずは家を建てることが当面の目標となる。

序盤はとにかく金欠で、農業のためのタネも買えない。この「裸一貫」からスタートする感じが好きなら、きっと気に入るぞ。


・今作の第一印象

序盤を現実時間で1日ほどプレイしてみて、感じたことを書いていきたい。

牧場物語はその名のとおり、農作業をして農産物を出荷することがゲームプレイの中心。地味で地道な、いわゆる作業ゲーだ。そこに最近のスローライフゲームのヒット要素を巧みにプラスしたのが今作、という印象。

具体的にはリストを埋めていくコレクションの楽しみと、素材をやりくりするクラフトの楽しみだ。

たとえば博物館システム。探索中に発見したものを寄贈すると館内に展示され、グラフィックはシンプルだがコレクター魂をくすぐる。

図鑑は野菜、水産物、料理、お宝、オブジェと数えきれないくらいのページがあり、がぜんコンプリートしたくなってくる。

あつ森ほどのバリエーションはないものの、集めた家具や設備はレイアウトを楽しめる。服やアクセサリーを作って、お着替えできるシステムも健在だ。依頼に応えて街を発展させていく要素まである。

さらに、今作はクラフト要素にかなり力が入っていると思われた。加工品を生み出す「メーカー」の種類がえげつない。


・クラフトの醍醐味

たとえば農作業。タネをまいたら毎日1区画ずつ水やりをして、数日後に収穫する。ゲームの根幹をなす部分なのに恐縮だが、水やりは死ぬほど面倒くさい。

すると人は考える。いかにこの作業をラクにできるかと。かなり序盤でスプリンクラーのレシピが判明し、作成には2種類の材料が必要だとわかる。


クラフトは何段階にも分かれている。素材を集め、その素材を加工する機械を作り、機械にセットして待つ。そうして作った加工品を、今度は別の加工品の材料にし……と延々と続いていく。

2時間後には○○が出来上がるから、それで□□メーカーをクラフトして、そのあいだに△△を……と時間泥棒である。

クラフト系ゲームでは、やや絵柄にクセがあるが「きみのまち ポルティア(My Time At Portia)」が良作だと思う。今作のように何段階にも分かれた作業工程があり、しかも完成するのが建造物や乗り物のような大型の工業製品。

完成後には街の景観も大きく変わり、実際に役立っているのを見られるという、プレイヤーのツボを心得た内容だった。

牧場物語でも、素材と作業工程をいかに効率よく管理するか、というタイムマネジメントゲームのような要素が加わった。まさに「超多忙なスローライフ」である。


・ライバル婚は?

シリーズに受け継がれる伝統……それはキャラクターの好感度システム。仲良くなると交際、結婚、出産とライフイベントを疑似体験できる。

もし好みのキャラクターがいなくても、シリーズ25周年を記念して、過去作の恋愛候補や住人が配信される追加コンテンツを販売予定。別の世界線で恋人同士だったかもしれない、懐かしのキャラクターが登場する模様。


NPC同士が恋愛関係になる「ライバルイベント」「ライバル婚」については不明だが、賛否両論もあり最近は実装しない方向のよう。

ちなみに前述の「きみのまち ポルティア」では、狙っていた恋愛候補が別のキャラクターといい仲になり、あまつさえ恋愛相談を持ちかけられる事態にショックを受けた筆者。リアルではままあるパターンだが、ゲームの中でまで……!


最近の牧場物語は、基本的には生々しさのないほんわか恋愛で、プレイヤーの心をざわつかせるようなことはない……はず。たぶん。


・オンライン要素は薄い

あつ森の大きな魅力は他のユーザーとの交流だ。家族で遊べるマルチプレイ、他のプレイヤーの島への訪問、アイテムの交換、マイデザインのシェアなど、人と交流したくなる仕掛けにあふれている。

一方の牧場物語は、オンライン機能はあるものの限定的で、基本はソロプレイだ。人に見せる、なにかを分け合う、交流するといった楽しみはない。1人で黙々とやるプレイスタイルなので、コミュニケーションを求める人にはちょっと物足りないかもしれない。


・買いだと思う

ロードの多さ・長さが気になるほか、「ルーンファクトリー4」などキャラクターイベントの充実した作品に比べると、会話が単調になりがちな面もある。

しかし作物を育て、家畜の世話をし、住人と交流するというシリーズの基本はしっかり踏襲。そこに最近のトレンドをトッピングし、正統進化で安心の牧場物語だ。これまでのシリーズのファンなら「買い」!

もし初めての場合、人とシェアするというモチベーションがなくても、1人でコツコツとやる地道な作業が苦にならないなら「買い」だ。自分で目標を見つけるのが好きな人にはオススメ。

とりあえず筆者は、スプリンクラーで農業を自動化するまでがんばるぞ!


参考リンク:「牧場物語 オリーブタウンと希望の大地」
執筆:冨樫さや
Photo:RocketNews24.