電車に疎い人でも “カシオペア号“ という列車の名前くらいは聞いたことがあると思う。このカシオペア号は東京の上野駅から北海道の札幌駅を繋いでいた寝台特急列車。コアなファンも多かったが、2016年に惜しまれながらも運行を停止した。

しかしながら、カシオペア号は不定期ではありながらも、いまでも線路の上を走ることがあるのだという。ぜひともその姿をこの目で見てみたい!

・カシオペア号がまだ走っていることを知る

上野駅のおとなり、尾久駅周辺を歩いていたときのこと。ここ尾久駅には尾久車両センターとよばれるJR東日本の車両基地がある。

私はそこに停車しているカシオペア号の姿を見つけた。たしか、カシオペア号は3年前に運行を終えたはずでは!? そう思い、駅員さんに聞いてみると「いまでもツアー限定で走っている」というのだ。

寝台特急カシオペア号……。そこまで電車に詳しいわけではないが、この列車にはずっと憧れがあった。まず、東京から北海道まで津軽海峡を越える深夜の長い旅、というのがカッコよすぎる。

そしてなにより「カシオペア号」という名前に風情がある。なんだか『銀河鉄道999』の世界を彷彿とさせるようなネーミングで、行先は札幌なわけだが、もしかするとどこか違う世界へ連れて行ってくれるのでは? とファンタジーな気持ちになってしまう。

石川さゆりの『津軽海峡冬景色』も思い出す。「上野発の夜行列車 おりた時から~」というフレーズを聞きながら、雪に染まる札幌駅にカシオペア号から降りてみたい。

そんな感じでいつか乗ってみたいと思っていたのに、結局乗ることもなく、カシオペア号の運行は終わってしまったのだ。

・カシオペア号のツアーは金曜日の夜

駅員さんが話していたカシオペア号のツアーを調べてみると、複数の旅行会社がツアーを販売していた。しかしその料金は、部屋のグレードによっても変わるが20~30万円とかなりの高額。参加したい気持ちは山々だが、どう考えても自分には手が届くような料金ではない。それならせめて……


走っている姿をカメラに収めたい!


そこで作戦を考えた。カシオペア号の次の運行日は9月21日の金曜日。16:20に上野駅を出発し、東北地方を周遊して東京に帰ってくるとのこと。ということは、その時間に合わせて尾久駅で待ち伏せしていれば、走行中のカシオペア号を見ることができるはずだ(駅員さんいわく、カシオペア号は尾久駅を通過するという)。私は当日、再び尾久駅へと向かった。

・走行中のカシオペア号をカメラに収める!

私が尾久駅のホームに到着したのは16時。この駅には東北本線と高崎線が乗り入れており、わりと頻繁に電車が停車する。もしも、この電車が停車している間にカシオペア号が通過してしまったら、その姿を激写することは難しい。

これは運との勝負になるなとも思っていると、「尾久駅は上りと下りも1車線ずつだから、重なる心配はないですよ」と同じくカシオペア号を見にきた男性が教えてくれた。

ほかにも10人ほどのギャラリーがいる。やはり、カシオペア号は見られるというだけでもかなり価値のある列車のようだ。そしていよいよ……

16時20分。そろそろ列車が出発する時間だ。私も周りの雰囲気につられてソワソワしていた。すると……遠くでオレンジ色のランプが2つ光った。ついに!








カシオペア号がやってきた!!


・楽しそうな乗客

出発したばかりでゆっくりと走るカシオペア号の窓からは客室が見える。これから数日間、寝台列車の旅に出る乗客たちは大きなカバンを広げ、楽しそうな様子で荷物を整理していた。

現在では、格安航空券などの普及で東京・札幌間も安く早く気軽に移動できるようになり、寝台列車の需要は著しく減ってしまった。しかし、寝台列車だからこそ見られる景色というものもあるはずだ。カシオペア号、どうか1日でも長く走る姿を見せてくれ!

Report : 國友公司
Photo : Rocketnews24.

▼車両点検中の尾久車両センター

▼年季の入ったカシオペア号の車体

▼出発したばかりのカシオペア号はかなりゆっくりだった