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本日6月6日は楽器の日! ピアノから鍵盤ハーモニカまで、世界各地に様々な楽器が存在するが、どんな楽器にも共通する大切な作業がチューニング。そんな中、楽器の中でも普及率で1、2を争うギターは、チューニングが合わない楽器として有名である。

ギタリストやギタークラフトマンは、日夜、正しいドレミファソラシドを出すために探求を繰り返す。現役ギタリストである私(中澤)は、このギターのチューニングに関する話がとにかく大嫌いだ。なぜなら、オカルトを常識のように語る『チューニング狂ってる妖怪』が多いからである。

・基本中の基本であるチューニング

確かにチューニングというのは、楽器において基本中の基本。チューニングが狂っていると、楽器本来の魅力を引き出せないと言っても過言ではないだろう。ほとんどのギタリストが、正しい音程に合わせるために「チューナー」という機械で音程を確認しながらチューニングを行う。

・機械にピッタリ合っていてもチューニングが狂う理由

しかしながら、機械の指し示す音程にピッタリ合っているのに、いざ弾くとチューニングが狂って聞こえることがある。なぜ機械で合わせているのにチューニングが狂ってしまうのか? それには以下のような理由が考えられる。

1. オクターブチューニングがズレている
2. フレットを押さえる力が強い
3. 他の楽器が上記1と2の理由でズレている

一応、代表的な例を3つ挙げたが、初心者のチューニングがどうしてもズレる場合、ほとんどが2に該当する。ギターはフレットを抑えて音を出すため、オープンで弾く音以外は弦が引っ張られることになる。これは言い換えれば、ごく弱くチョーキングしている状態なので音が若干上ずってしまうのだ。

ギターのチューニングが合わない理由は、この構造上の問題にある。つまりウマいギタリストは、フレットを押さえる力の調節でより正しい音に近い音程を出すことができる。

・私のレコーディングでのチューニングの合わせ方

私の場合、レコーディングなどになると、ライブよりも落ちついて音が聞き取れるため、ドレミファソラシドの音階がハッキリ出るように使うフレットを押さえながらチューニングを行う

・チューニング狂ってる妖怪

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……とこのような話が繰り広げられるわけだが、問題は言うほどチューニングが狂ってないのに「チューニングが狂ってる」とダメ出す人の存在。なぜそういった人がいるかと言うと、そう言えばなんとなく「耳が良い人なのかな」と捉えられるからだ。

しかも、そういう人は雑誌などで読んだ知識や尊敬する人が言ったことを、そのまま他人に「正しい知識」として流布したりダメ出しを始めたりする。そうなると、もう「妖怪」と言わざるを得ない。なぜなら、押弦の力は人によって違うからだ。

・プロのローディーだった頃の体験

20代前半にプロのローディーとしてミュージシャンの使う楽器のメンテを行っていた私は、仕事柄様々なミュージシャンのチューニングのやり方を見て、実際にチューニングをしてきた。チューナーに対して、「真ん中のメモリに合わせるのではなく、1~2メモリ低く設定してくれ」という人や「2~3メモリ」という人までいた。

・人それぞれのやり方

要はプロでも自分の押弦した時の力に合わせてチューニングを行っており、そのやり方は千差万別なのだ。大先輩のローディー妖怪に「弦を伸ばすな」と怒られたこともあれば、「弦高が低ければ低いほど良い」というクラフトマン妖怪もいた。「このチューナーを使え」と薦めるミュージシャン妖怪もいるだろう。ライブでギターの1セントの音程の違いなんて誰がわかるのか?

いくら高級なチューナーを買っても、チューニングできないのがそういった「思い込み」。要は「これを使えば安心」などの思い込みにお金を払っている人が多い。

チューニングは自分に合っているかどうかのみ。極論、気にならなければチューニングをする必要はないのだ。良き音楽ライフを送るためにも、チューニング狂ってる妖怪には気をつけよう。

執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.

▼ライブでギターの1セントの音程の違いなんて誰がわかるのか?
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