2021年3月5日(金曜日)、劇場版ディズニー最新作『ラーヤと龍の王国』が公開となった。冒頭から申し上げてしまうが、個人的に「ラーヤはアナ雪よりも俄然おもしろかった」というのが、試写会で同作を鑑賞した直後の率直な感想だ。

とはいえ、映画にはどうしたって個人の趣味嗜好が大きく影響するもの。そこでディズニーを愛し、ディズニーに愛された男、当サイトの “ディズニーマニア” こと田代大一朗に『ラーヤと龍の王国』をどう思ったのか聞いてみることにした。

・予測を軽く超えてきた

娘が生まれてからというもの、私(P.K.サンジュン)はディズニー作品を結構な頻度で鑑賞している。4歳の娘はゴリゴリの “エルサ推し” なので「アナと雪の女王」に関しては30回以上は観ているのではないだろうか? というか、なんで子供は同じ作品を無限ループするのか?


それはさておき、その他の主要作品もほとんどは鑑賞しており、ぶっちゃけて言えば「そこそこ」で終わるものもあれば「良かった」と思えるものもある。ピクサーも含めれば個人的には「シュガーラッシュ」「リメンバーミー」「アラジン」がTOP3です。

・個人的にはアナ雪以上

で、日本のみならず世界中で大ヒットを記録した「アナと雪の女王」はそれなりに好きな作品だ。ゲップが出るほど繰り返し鑑賞したことはさておいて「よく出来てるな」と思うし、アナのひたむきさには感動する。アナ雪を超えるディズニー作品はそう多くあるまい。

……が、『ラーヤと龍の王国』はアナ雪よりも刺さった。正直に申し上げてしまうと、鑑賞前は「どんなもんですかね~?(ニヤニヤ)」的な感情もあるにはあったが、MyディズニーTOP3に食い込んでくる勢いでラーヤは良かった。

ではラーヤの何がそんなに良かったのか? ここからは一緒に試写会で同作を鑑賞したディズニーマニアと共に『ラーヤと龍の王国』の魅力に迫っていきたい。


・歌わないプリンセス


──いやー、ラーヤ良かったわ~。正直全然期待してなかったんですけど、すごく良くなかったですか? 田代さん。

「わかります。本当にいい作品でしたね。予想を超える完成度でした」

──ですよね。なんというか、僕は全然ディズニーっぽくない作品だと思いましたね。なにせプリンセスが1度も歌わないんですよ? なかなか異例じゃないですか?

「確かに従来のプリンセスとは雰囲気が違ってましたね。ラーヤはプリンセスというより “ヒロイン” の方がしっくり来ます。ただ、僕はディズニーの王道作品という気がしました」

──え、マジですか。

「はい、今回のテーマは “信じる心” です。これはウォルトが最も大切にしていたディズニーの核の1つですから、僕的にはディズニーの王道作品だと感じました」

──なるほど、そういえばそうですね。

「ただし、願い信じてそのときを待つ初期の方のプリンセスとはタイプが違いましたね。近年は、願うだけではなく自ら未来を切り開くプリンセスが多く、ラーヤもその特徴がしっかり現れていました」

──ですよね。

「そういう意味でラーヤは、近年のプリンセス像の集大成ともいえるかもしれません」


・雨の意味


──そうそう、東南アジアがモデルの作品は今回が初めてらしいんですが、これもハマってましたね。

「確かに違和感は全くありませんでした。あと、印象的なのが “雨” の使い方です」

──雨ですか?

「例えばアナと雪の女王では、氷が人と人をつなぐ重要な役割を持っています。ラーヤではそれが雨でしたね。歴史や文化の壁を越えてみんなで共有する雨、そして天と地という普段は決して交わらないものをつなぐ雨……。雨に注目すると作品をより深く楽しめるのではないでしょうか

──さすが、深い。それと僕はダブルヒロインって感じがしたんですが、どうですか?

「ああ、確かにそうかもしれませんね。どちらが欠けても物語は成立しなかったでしょうから、確かにダブルヒロインと言えるかもしれません。サンジュンさんもディズニーを深く観察するようになってきましたね」

──恐縮です。田代さんと娘のおかげです。


・アナ雪を超えるのか?


──で、田代さん。ラーヤはアナと雪の女王を超えると思いますか?

「作品自体のおもしろさはヒケを取らないと思います。アナと雪の女王は、一度聴いたら忘れられない名曲によって人気を拡大させたという一面があります。ラーヤでは感情の高まりを歌ではなく戦闘シーンで表現しており、そこをお客さんたちがどう受けとめるのかが気になるところです」

──確かに。戦闘シーンはかなり多かったですね。

「世界中で、信じる心がどんどん弱まっている昨今、“世界がいま最も必要な魔法” がこの作品で描かれていると思います」

──なるほど。

「そしてその魔法は本当は難しいことではなく、目の前の相手を信じるというシンプルなこと。そんな温かくてキラキラしたメッセージが伝わってくる気がします」

──ふむふむ。

「この魔法を感じて信じてもらうために、ぜひ世界中の人に観てもらいたいですね」

──そうですね。そう思います。

「いや……違う……」



──え?

「本作のテーマは “信じる心” です。今作のさまざまなキャラクターが、信じる心を自ら動いて示した……なのに僕という人間はなんて愚かなんだ……!」

──え? え?

「ラーヤたちは、まずは自分から相手を信じることの大切さを教えてくれたのに、僕はうかつにも “多くの人に観て欲しい” なんて他力本願なことを言ってしまった……!」

──え、何が悪いんですか?

「多くの人に観て欲しいと願うなら、僕が自ら行動を起こすべきなんです! だからサンジュンさん!!」

──は、はい!

僕はあと100回ラーヤを観ます!!!!

──え、あ、はい。

再三お伝えしている通り、個人的に『ラーヤと龍の王国』はかなり良かった。……が、歌がないことに加え、新型コロナウイルスの影響で映画業界全体に活気がないこのご時世……アナ雪を超えるかどうかはちょい不明瞭だ。だって東京でも15カ所でしか上映しないんだって! もったいない。

ちなみに同作は劇場公開と同時に、ディズニープラスの「プレミアムアクセス」でも配信される。ただし、プレミアムアクセスは月額と別に2980円(税抜き)かかる……結構お高い! どちらを選ぶかはお任せするが、ただ1つ『ラーヤと龍の王国』が秀逸な作品であることは断言しておく。

というわけで、ディズニー大好きっ子はもちろんのこと、ラーヤは多くの人に刺さる作品ではなかろうか? そうそう、個人的には “信じる心” の表現が恩着せがましくなかったところも良かったよね! たまに鼻につく作品もあるんだよ!! 『ラーヤと龍の王国』は2021年3月5日公開だ。

参考リンク:ディズニー『ラーヤと龍の王国』
執筆:P.K.サンジュン
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▼予告はこちら……なのだが、個人的には予告すら観ない方がいいと思う!