最近、カセットテープの魅力が見直されているという。そのことを知った私(佐藤)は、レコードショップに駆け込んで中古の洋楽テープを購入した。約20年ぶりに聞くテープ音源には、何とも言えない “間” があり、懐かしさに心温まるものがある。さらに、浅草の老舗レコード店で演歌の新品テープも購入して、今の時代のカセット音源を堪能している。

そうしているうちに、今度はカセットテープに自分の声を録音してみたくなった。もしかして “生” のテープはもう販売していないのか? そんなことはない、最寄りの家電量販店に行ってみると、バリバリ販売していることを確認した。そこで生テープを購入して、懐かしのラジオごっこを楽しんでみたぞ!

・生テープは売ってる!

東京・新宿3丁目のビックカメラ(ビックロ)に行ってみると、オーディオコーナーの片隅にノーマルポジションの生テープが並んでいる。生テープとは、音の録音されていない無音テープのことだ。10分から90分のものまで、取り揃えられており、まだまだ需要があることがわかる。


しかしながら、ノーマルポジションよりも音質の優れたハイポジションやメタルポジションのテープは製造されておらず、これらを手に入れるには割高なネットオークション等で購入するしかないようだ。


・ラジオごっことは?

とにかく生テープが手に入っただけでもありがたい。マクセルの「UR」の46分を2本購入して、編集長GO羽鳥とラジオごっこしてみることに。ラジオごっこを知らない世代の人のために説明すると、「生テープにおしゃべりを録音する」。ただそれだけである。

ラジオ風にしゃべるだけで他には何もない。気の利いた人ならバックでBGMを流したり、ディスクジョッキー風に曲紹介をしたりするかもしれない。これと言った決まりのない遊び、それがラジオごっこである。


実際に録音してみたところ、使用したレコーダーの内臓マイクがとても貧弱で、めちゃくちゃ音が悪い!


だが、その音の悪さがイイ!! とてもイイ! 昭和のAMラジオを聞いているような、猛烈な音の悪さである。2人でしゃべった内容がとても聞きづらい。でも、それがイイ! むしろそれでイイのである。


・思い入れ

最近は何でもかんでも便利になったのは良いのだが、モノに対する愛着が希薄になっている気がする。どこに行っても何をやってもスマホで写真を撮るのに、それを見返すことがなかったり……流行りの曲をダウンロードしても、繰り返し聞くようなことはなかったり……。音楽に関しては、サブスクリプション(定額払い)で、曲を買う感覚さえ薄まってきている。

簡便さと引き換えに、「思い入れ」や「愛着」までも捨て去ろうとしているのではないだろうか? 不便よりも便利が良いのは当然だ。しかし、不便であるがゆえに創意工夫は生まれるし、知恵を育んで考えるきっかけにもなる。


ラジオごっこの音は悪い上に聞きづらいけれども、今日この日、羽鳥と他愛のない会話をしたことは忘れないだろう。そして、音の悪いテープを聞き返す度にこの日のことを思い出すはず。「私の46歳の誕生日に、羽鳥とラジオごっこをした」。このテープを聞く度に、今日のことを思い出すだろう。


Report:佐藤英典
Photo:Rocketnews24

▼第1回佐藤と羽鳥のおもしろラジオ