失敗は誰にでもあるが、2020年最速クラスで下手こいたのはおそらく私だろう。なにせ、1月1日・元旦でのマッハ下手こき。詳しい時刻は午前11時と、まだ半日も経っていない段階での失態だったからである。

ちなみに当編集部の正月といえば、毎年恒例となった「福袋特集」で読み手が吐きそうになるくらいの福袋情報を繰り出す。今年は過去最高の163本もの記事が公開されて私も参戦したわけだが、新年一発目の福袋で入れた気合いが大きく空回ってしまった。それから数日、まさか社内で無視されることになろうとは……。

事の発端は新春の紳士服を何店舗か渡り歩き、面白そうな福袋を物色していたときのこと。紳士服コナカにて……

2万円でスーツを揃えられるセットを発見したのだ。しかも、お得になる金額は2万8800円。これってもしかしたらもしかして……ダイヤモンドの原石なんじゃ?

過去の福袋経験、当日見た他の店舗も合わせると私の三流スカウターは “勝ち戦” だと判断した。お宝を見つけたような気分になった私は、ミキティもびっくりのロマンティック浮かれモード状態へと突入!

試着して即購入。その時はいい買い物をしたなと自分で自分を褒めていた。


……が!!

福袋の記事内にも書いたが、まさかの後日受け取りとなったから天国から地獄へ突き落とされた。別にいいじゃないかと思う人もいるかもしれないが、記事にするにあたりブツがないことは「死」を意味するのだ。しかも……

よく考えたら相当微妙なネタ(コナカに罪はない)だった上に2万円のお高い買い物だったから、周りの反応が冷ややかな反応になるのも当然の流れ。新年早々、取り返しのつかないことをやっちまった……!!


死にてぇぇぇぇ……!!


とはいえ、命は投げ捨てるものじゃないし買っちゃったものは仕方ない。その日はひっそりと隠れるようにコナカの福袋記事を提出してやりすごした。案の定、周囲の反応が冷ややかだと感じたが、時が過ぎれば忘れることだろう。オッサンばかりだし、すぐに忘れるはず!


ハハッ……


とか笑っていられたのも数日だけ……


周囲の態度が和らぐ気配は1ミリもない(つд⊂)エーン


年長者の佐藤にこっぴどく叱られ、編集長のGO羽鳥までも無視という状況は夢かとも思ったが、初夢にしちゃリアルすぎる冷たさだ。ここまできたら辞職ものだが、とりあえずどうにかして罪滅ぼし……禊(みそぎ)の意味も込め、正月休み明けに出来上がったスーツを着て私服当たり前の会社で仕事をすることにした。

そしたら……


完 全 無 視


待て待て、先輩が無視するのは百歩譲ろう……餃子仲間のGO羽鳥が一緒に餃子を食べるとき以外笑っていないのも百歩譲ろう……でも……

ポケモンGOをいつも一緒にプレイしているサンジュン……


後輩の あひるねこ ……


さらには……


もっと後輩の亀沢郁奈まで無反応なのはキツいって……!!!!


たった一度の失敗がこうまで人生を変えてしまうことってあるのか。でも、現になっているからあるのだろう。身も心も寒い……もうダメだ……。苦しい……。もうこうなったら……コナカスーツで就活しよう。転職するしかない……!!

履歴書を書いて準備はできた。次の職場では正しい判断ができる大人になろう……。



今までありがとう、みんな……。



さようなら……


と会社を後にしようとしたら……

取材から帰ってきた佐藤とバッタリ出くわした。またしても無視されると思いきや……


佐藤「おっ、スーツ似合うじゃん! 今日何かあるの?」


えっ……? と驚いている私を尻目に、佐藤は続けて周囲に向かってこう言った。


佐藤「みんなも原田みたいに、たまにはピシッとした服を着たらどうだ」


すると……

全員の顔がほころんだ……!


そう、佐藤は量り売りのステーキをしょっちゅうド忘れしまくる46歳の初老である。どうやら私の福袋ミスのことなんて記憶から消し去られていたようだ。ともあれ、偶然にも私は佐藤の物忘れに救われた。


……ってハッ!

ものの数日で忘れることなんてあるはずない……


まさか私のことをかばって……


さ、佐藤さん……! ありがとう……!!


その日以来、社内の空気は幾分和らいで平穏を取り戻しつつある。これは佐藤パイセンの男気が救ってくれたと言っていいだろう。後日、私はどうしてもお礼が言いたいため、改めて気持ちを伝えた。


「佐藤さん、先日はありがとうございました! スーツでミスをしたのに助けてくれて……しかも、みんなとの間まで取り持ってくれて……!!」


佐藤「なんのこと?」


ぜ ん ぶ わ す れ て た


<完>


※この後、全員から許してもらいました(つд⊂)

執筆:原田たかし
Photo:RocketNews24.