ストロングチューハイ……それは人を酔わせる魔性の酒。もちろん9%というアルコール度数は飲む者を選ぶ。苦手な人も多いだろう。そこへ登場したのが『サッポロチューハイ 99.99(フォーナイン)』だ。アレは、ヤベえぞ……。

何がヤバイって、アルコール度数9%にもかかわらず、恐ろしく飲みやすいのだ。私(あひるねこ)も実際に飲んでみたが、とても9%とは信じられない飲み口だった。ネットでも「危険」「人を狂わせる」と話題になっており、そのヤバさは群を抜いている。

一体どこのどんなヤバイ奴が、こんなヤバイ酒を作っているのか……!? 気になった私は、「サッポロビール」の本社に突撃をかますことに!

・ヤバイ奴らに会いに行く

私は現在、恵比寿にある「サッポロビール」本社前にいる。『99.99』の開発者に話を聞くためである。このヤバすぎるチューハイを作った人間だ。きっと猛烈にヤバイに違いない。


中に入ると会議室に案内された。何かあった場合すぐに脱出できるよう身構えつつ、扉を開ける。むっ! 中に人影が。ヤバイ気配がする……。


ああ~見えてきたッ! ヤバイよヤバイよ、絶対ヤバイよォォォオオ!! 助けてお母さぁーーーーーん!!!


と思ったけど、見た目はけっこう普通だった。サラリーマンかな?


いや、油断は禁物だ。もしかしたら経済系の怖い方たちかもしれない。右の男性は、その可能性がワンチャンある。

・開発者に聞く

それでは気を取り直して紹介しよう。今回話を聞かせてくる「サッポロビール」の鯨岡さん(右)と伊藤さん(左)だ。そう、あのヤバすぎるチューハイ『99.99』を作った激ヤバイ奴らである。さっそく話を聞いていきたい。


ちなみにこの後、片方の男性がガチでヤバイ奴であることが明らかになる……。


──『99.99』はネットで非常にバズりまして、売上も好調だそうですね。この状況は予想していましたか?

鯨岡「花火を打ち上げたいなと思ってはいましたが、正直ここまでは想定していませんでした。狙ったと言えば狙っていたので、よかったよかったという感じです」

──ネットでは「ヤバイ」「危険」など、チューハイとは思えないワードが飛び交っていますが、ぶっちゃけキレてます?

鯨岡「いえいえ、話題になるのはありがたいことですよ」

──ずいぶん穏やかですね。仏かよ。

伊藤「ビール以外のカテゴリーでここまで話題になることは過去にありませんでしたから。嬉しいですね、逆に」

──すげえなサッポロ。

・目指したのはシンプル

『99.99』を作るに当たり、他社のように果実を推していくのではなく、そもそものネタとなる酒で勝負しようという視点があったという。その結果、純度99.99%の高純度ウォッカを使用したチューハイを作ることになったそうだ。

鯨岡「デザインも今までの固定概念を壊して、『サッポロビール』らしさを缶に表現したいと考えました。そこで行き着いたのが “シンプル” というキーワードです」

──たしかに『99.99』のデザインって、あまりチューハイっぽくないですよね。シャレオツというか。

鯨岡「ちょっとメモを持ってきたんですけど……。普通だったらウチもこういうデザインにすると思うんです」

──ほうほう……。


──これは売れねえわ。

鯨岡「こういう風にロゴがドーン! みたいな感じではないデザインにしたかった。そこで参考にしたのが、某オシャレな最新スマホのメーカーです」

──おや?

鯨岡「たぶん持っている方は多いと思うんですが……」

──あ、出さなくて結構ですよ。

鯨岡「こういう……」

──オイやめとけ。

鯨岡「つまり、もし某オシャレな最新スマホのメーカーが『99.99』を作ったとしたら? という視点ですね。引き算することで、印象に残るようなデザインにしたいと考えたんです。実は『99.99』は、パッケージから先に作ったんですよ」

──おお、それはスゴイ話だ。

鯨岡「30~40代のアニキたちが家に帰ってお酒を飲むシーンっていうのも、作る過程で想像しました。『俺を手に取ってくれ!』みたいなデザインではなく、読書したり映画を見たり、そういった一人の時間を邪魔しないデザインを目指したかった」

──それ、飲む側からすると大切かもしれないですね。デザインのせいで手に取りづらい商品って実際にありますから。

伊藤「あと、チューハイって安く酔える安酒みたいなイメージが強いですが、それを払拭したいという思いはありました。エコノミークラスではなくビジネスクラスというか。コレを飲んでる俺、カッコイイって思ってもらえればなと(笑)」

──たしかに『99.99』には、他のチューハイにはない大人っぽさを感じます。


・足すのではなく引く

事実『99.99』は、メインターゲットと考えた30~40代の男性にドンピシャで売れているそうだ。また、先ほど “引き算” というワードが出たが、この考えはデザインだけではなく中身にも反映されているという。

伊藤「普通、商品を新しく作ったりリニューアルする時は、要素を “盛る” 傾向にあるんですね。でも、私たちは逆にそぎ落としていったんです」

──なるほど、そうやって純度を高め研ぎ澄ましていった結果、異様に飲みやすいチューハイが生まれてしまったと……。気になっていたんですが、最初にコレを飲んだ時の社内の反応はどうだったんですか?

鯨岡「まあ、飲みやすいなと」

──でしょうね。

伊藤「引っかかりが一切ない」

──分かる。

鯨岡「雑味もない」

──うん。

伊藤「そして飲みやすい」

──さっき聞いたわ!


・まさかの事実

やはり「サッポロビール」の他の社員たちも、『99.99』のヤバさには最初から気付いていたようだ。あんなにスルスル飲ちゃうのだから当然である。しかしこの後、開発者の一人である鯨岡さんの口から衝撃的な発言が飛び出す。


──鯨岡さんはどうでした? 最初に飲んだ時、どういう感想を持ちましたか?

鯨岡「いや僕ね、お酒めちゃくちゃ弱いんですよ」


お酒めちゃくちゃ弱いんですよ



いやいや、『99.99』を作った男が酒めっちゃ弱いて! あんたがデザインしたんだろうが! 何がしたいんだコラ!! しかし鯨岡さんは止まらない。


「たぶん会社で一番弱いです」


「コップ一杯のビールでギリです」


「試飲はいつも極少量です」

・ガチでヤバイ奴

意味不明である。繰り返す、意味不明である。ヤバイと見せかけ、実際は真面目に開発してるんだなぁと思いきや、最終的に予想の斜め上のヤバさを叩き付けられた気分だ。

鯨岡「だから申し訳ないですけど、みなさんが『ヤバイ』とか『危険』とか言ってくれていることに対して、あまり共感することができないんですよね(笑)」

──(笑)じゃねーよ。


いかがだろうか。アルコール度数9%とは思えない飲みやすさで話題になった『99.99』。業界のお決まりや前例を取っ払い、攻めの姿勢で開発されたこのチューハイを作ったのは、ある意味で本当にヤバイ男たちだったのである。

今回のインタビューを通じ、みなさんにもそこに込められた思いが伝わったのではないか。というわけで年末年始のパーティーは、ぜひ『99.99』をお供に楽しんでいただきたい! それでは最後に、鯨岡さんから一言。

鯨岡「みなさん、お酒の飲みすぎには十分注意をしてください

現場からは以上である。

参考リンク:サッポロチューハイ 99.99(フォーナイン)
Report:あひるねこ
Photo:RocketNews24.