先日、郵便局のATMを操作していると、深刻そうな表情の中年女性が背後から声をかけてきた。まるで「あなたの振り込み、それ詐欺よ」といわんばかりの様子である。不安になり促されるまま、女性に連れられてゆくと……

気づけば5分後、私は『ゆうちょPay(ペイ)』なるアプリをスマホにダウンロードしていた。彼女の正体は「ゆうちょペイの普及活動を行う職員」だったのである。それはいいのだがキャッチセールスさながらの手法が白昼堂々、郵便局内で行われていることには驚きを隠せない。

熾烈をきわめるQRコード決済市場で台頭するため、郵政もシャカリキに頑張っているのだろう。昨年5月にスタートしたゆうちょペイ、そのメリットとは?

・各社の還元合戦

QRコード決済市場は現在のところ『PayPay(ペイペイ)』が首位独走状態の様子だが、『LINEペイ』『auペイ』『メルペイ』なども負けてはいない。「ややこしいから1本化」を決め込んでいた私も、結局3つのアプリをダウンロードしてしまった。

なぜなら各社が激しいキャッシュバック割引キャンペーンを展開しており、タイミングによってはビックリするほどお得な買い物ができるからだ。あまりにもキャンペーンが多いため、「そんなつもりじゃないのになぜか20%還元された」なんてことも日常茶飯事である。

対するゆうちょペイのアプリには『クーポン』という項目が用意されている様子だ。競合他社と比較した “おトク度” はいかほどなのか? さっそくのぞいてみると……


『ポプラの200円オフ券』



『ポプラの200円オフ券』!!!!!


ビックリして2回言ってしまったが……正確には『ポプラ』と『生活彩家』『くらしハウス』『スリーエイト』各店で使用できる200円オフ券。ゆうちょペイで4月8日現在使用できるクーポンは、なんと、この1枚きりである。ポプラか……ずいぶん長いこと見かけていないなァ。

さらに調べてみると……どうやら現在のところゆうちょペイで決済を行なっても、基本的にはポイントでキャッシュバック等といった特典は受けられない模様なのだ。

買い物とは本来、売り手が提示する金額を買い手が支払うもの。「特典そんだけ!?」と感じてしまった自分は、キャッシュバックのぬるま湯にどっぷり浸かった怠け者だ。そのことは真摯に反省するべきだろう。とはいえ他社がこれほど多くのキャンペーンを打ち出す中、おトク度では「勝負にもならない」というのが正直な感想である。


・メリットは、ある

しかしながら……ゆうちょペイを導入するべき人は確実にいる。まず「使用した分はゆうちょ口座から即時引き落とし」という点が、ゆうちょペイ最大のウリだ。

生粋の都会人には分からないかもしれないが、地方から都会へ越してきた者(私を含む)なら誰しも「ゆうちょのありがたみ」を実感した経験があるだろう。メガバンクといったって地方へ行けば通用しない。全国どこでも通帳が使えるのはゆうちょだけである。

そんなゆうちょユーザーにとって、アプリで貯金残高が簡単に確認できるのは非常にありがたい。この点だけみてもアプリを導入する価値はあるといえるのではないだろうか。よってゆうちょペイを導入すべき人物として、まず「地方民」が挙げられる。


それから「クレジットカードがなくても小額から利用開始できる」という点にも注目しておきたい。現在多くのQRコード決済アプリではクレジットカードとの紐付け決済がメインである。銀行口座からの引き落としも可能だが、まずアプリに所定の金額をチャージしなくてはならない場合が多い。

その点ゆうちょペイは1円単位で口座から金額が差し引かれるだけの簡単システム。クレジットカードを持たない学生さんなどにはハードルが低くて良いといえるだろう。


・最も恩恵を受けそうなのは……

さらに私が最もゆうちょペイを導入すべきであると考えるのは、ズバリ「ご年配」の方々だ。

思い出すのは1年前、初めてスマホを購入した60過ぎの父が「ペイペイを使いたい」と言い出した。しかし「登録したIDとパスワードがなければクレジットカードの紐付け不可」という事態に、そんなもん覚えちゃいない父は戦意喪失状態である。

それでいて私がカード会社に問い合わせれば「本人でなければ教えられない」との返答だ。当の本人は「何が分からないかも分からない」状態であるというのに。キャッシュレス推奨の風潮が高まる中、年配の人たちに対してはまだまだ優しくないというのが現状であると思う。


そこへきてゆうちょペイは、先に述べた通り非常にシンプルな構造。おまけに郵便局へ行けば職員がダウンロードから登録まで、マンツーマンで丁寧に教えてくれるのだ。帰り際には「分からないことがあればいつでも来て」と声までかけられた。

年配者にとって「直接教えてもらえる」ことがどれほど心強いかは、我が両親を見ていればよく分かる。多少おトク感が下がっても授業料だと思えば安いもの。父には「まず勉強のつもりでゆうちょペイを」と勧めるつもりだ。

またクリックひとつで高額チャージが可能なQRコード決済アプリの場合、うっかりしていると支払い能力を超えた決済をしてしまう危険性もある。自分の口座からいくら減ったかが即座に分かる点も安心だ。


・最後におさらい


ご年配

学生

ヘビーゆうちょユーザー

地方民

うっかり者


上記の特徴に当てはまる方は、ゆうちょペイ導入で恩恵を受ける可能性がある。もちろん利用に際して初期費用などは一切無料だ。気になる人はお近くの郵便局へ!

Report:亀沢郁奈
Photo:RocketNews24.

▼店頭でアプリに登録したら粗品をくれた

▼ファミマとセブンイレブンで使用可能なはずだが、「近くのお店を検索」機能では現在なぜかセブンイレブンが表示されない。今後の進化に期待!