あまり考えたくないことだが、我々は常に「もしも」の時を考えておかなければならない。異常気象による震災はもちろん、その他の「何か」が起きた時のことも……。とりわけ東京は、「いつか何かが起こる」と考えられやすい都市である。

「もしも」が来て、東京か壊滅的に破壊されてしまったら……どんな状況になるのだろうか? そして我々は、どのように対処すれば良いのか? 考えれば考えるほど不安は募るばかりだが、ここはひとつ、専門家に聞いてみることにしよう。

ということで今回は、遠い昔の2007年、「もしも東京が壊滅状態になったら……」というテーマに対して真正面から取り組み、わりと真面目に役に立つ1冊の教本『乱世のサバイバル教典(太田出版)』を書き上げた3人の著者を集めてみた。

まずは当サイトでもおなじみのクーロン黒沢氏。続いて、元・陸上自衛隊レンジャーという経歴を持つガチのサバイバリスト・サージェント阪木氏、そして上記の書籍で50ページの大作漫画を描いたマンガ家・マミヤ狂四郎(私)の3人である。

実は、この3人が集まるのは……


なんと今回が初!


大変貴重な機会がゆえ、ここからは対談形式……

──にしようと思ったのだが、あまりにも様々な話が出てきてしまい、めちゃ長くなることは確実なため、ポイントだけをかいつまんでお伝えしたい。


・大地震が起きたらどうなるか?

まず東京において真っ先に思いつく「壊滅的な破壊」の状況だが、長い間「いつか来る」と言われている大地震であろう。しかし、これまで何度も被災地に赴いてボランティア活動をしてきた阪木氏によると「おそらく大丈夫」という。

現場の状況を幾度となく見てきた氏いわく、

「日本人は困った時は助け合うという文化が根付いており、また、これまでの歴史から見ても災害という状況を受け入れる “受容度” が極めて高い。それは、我慢強く勤勉であるという国民性もあるが、いつか自衛隊などの助けが来てくれるという確信があるからであり、大地震の直接被害から生還できた人達は比較的秩序を守って行動できる」

と予想している。

混乱の時代のカンボジアを生き抜いてきた黒沢氏は、「それでもモラルが崩壊して……」と危惧していたが、「政府をトップとする指揮系統がきちんと機能していれば大丈夫」と阪木氏は太鼓判。すべては政府次第、だ。


・何者かが攻めてきて破壊されたら?

もしも「どこかの国」が攻めてきたら? もしくは世界どころか宇宙からの生命体、はたまたナゾの巨大生物が攻めてきたら? よく映画で描かれる世界であり、荒唐無稽な話に思えるが、可能性はゼロとは言えない。この話題は白熱した。

阪木氏によると、やはりポイントは「政府をはじめとする指揮系統」であるという。そこが適切な指示や対応をしっかりやれば、多少の混乱はあるかもしれないが、先述の「大地震編」と同じく秩序を保ちながら行動できると予想している。しかしもし万が一、政府が壊滅状態になってしまったら……?

誰かが助けに来ると確信のない状態、すなわち無政府状態の秩序なき世界になった場合、「当然、モラルは崩壊する」と黒沢氏。「食料やガソリンをはじめとした物資の奪い合いになる」と阪木氏。平たく言えば「乱世になる」と、マミヤを含めた3人満場一致の予想である。


・乱世になったらどうすればいい?

まるで北斗の拳か、マッドマックスな状況になった場合、まず可能性があるのが「強盗」「強姦」「殺人」あたりの犯罪だ。当然、その犯罪とセットになるのが「武器」の所持。武力がモノをいう世界になると三者共通で予想している。

ちなみに元自衛官の阪木氏によると、「自衛隊の武器庫ならびに弾薬庫は厳重に管理されているが、モラルなき悪者に奪われる可能性もゼロとは言えない」と釘を刺す。もっとも、最初から武器を持っている警察官のモラルが崩壊してしまったら……という可能性も捨てきれない。とにかく、すべては人間のモラル次第だ。

そんな極限の状態が、無秩序状態の東京で……となれば、もはや完全にバトルロイヤルゲーム『PUBG』や『荒野行動』の世界になること必至。我々はどうするべきか? 戦うか? それとも? 百戦錬磨の阪木氏の答えは「まずは安全な場所へ避難」であった。


・どこに逃げるか?

「もしも東京で」という条件で、阪木氏が真っ先にあげた候補地は「奥多摩方面」であった。理由は「混乱にまきこまれないため」であるという。なるべく人のいないところへ行き、そこでしばらくはサバイバル状態で生き延びつつ、都心の状況をできるかぎり偵察。その後どうするかは……状況次第というわけだ。


・生き残るための備え

奥多摩に逃げるといえど、当然ながら電車や車は使えない。頼れるのは自身の脚だ。ということで、まず重要なのは、なるべく丈夫な靴を用意しておくこと。荒れ地もヘッチャラのアウトドア用シューズなどが良いかも知れない。

続いては食料。阪木氏は、カロリーメイトはもちろん、軍用の食料も用意しているという。もちろん缶詰や懐中電灯、アルミ箔でできた防寒シート、火起こし道具、浄水器、ラジオなどの基本的なサバイバルグッズも抜かりなく準備。あとはナイフだが、

「大海を泳ぐ大マグロならいざしらず、川で捕れる魚はサバイバルナイフでは捌きにくい。よく鉛筆削りとかに使われる日本伝統の折りたたみナイフ『肥後守』ならば、小型な川魚を捌くのに適しており、使いやすい。小型軽量なので携帯にも便利」

とのことである。

また、奥多摩に行く間に戦闘が起きる場合もある。そんな時のために武器も持っておきたいところであるが、阪木氏がオススメするのは接近戦最強の武器と名高い「スコップ」であるという。身近な道具ながら、使い方さえ知っていれば武器&防具としては最強で、あのゴルゴ13に冷や汗を垂らさせたこともあるくらいだ。


・まとめ

長くはなってしまったが、本当はこの10倍以上の「生き残るための知恵」が会談中はポンポンと出てきた。しかしながら、詳しくは『乱世のサバイバル教典(太田出版)』に全て詳しく書いてしまった……というのが、黒沢・阪木・マミヤの共通意見である。もはや絶版の書籍であるが、乱世を生き残るための術が網羅されていると自負しているので、古本屋で見かけたらぜひとも手にとって欲しい。


・もうひとつ観ておくべきモノがある

さて、なぜ我々3人が唐突に緊急会議をしたのかというと、実は大きな理由がある。それは……東京が破壊された世界を体験できる映画『パシフィック・リム:アップライジング』のブルーレイ&DVDが2018年10月11日(木)に発売されるからである!

日本の特撮やアニメへのリスペクトが全開だった前作。続編となる「アップライジング」では、ついに日本が舞台になったという。東京の都市を破壊しながら、富士山火口へ向かう巨大生物 “KAIJU” たち……これぞまさ「乱世」であろう。


・豪華キャスト

ちなみに、あの菊地凜子が前作に引き続き「森マコ」役で出演。さらに新たな日本人キャストとして新田真剣佑が参戦。世界各国から集められたエリート訓練生「リョーイチ」を演じるという。なお、プロデューサーは「シェイプ・オブ・ウォーター」でアカデミー賞作品賞&監督賞に輝いたギレルモ・デル・トロだ。

さらにさらに、日本語吹替え声優が豪華なことも見逃せない。主人公ジェイク・ペントコストを中村悠一、スコット・イーストウッド演じるネイサン・ランバートを小野大輔が担当。そのほか早見沙織、坂本真綾、林原めぐみ、古谷徹など豪華キャストが共演……となったらチェックするしかないだろう!


・映像を観て、想像の備えをしておこう

そんな『パシフィック・リム:アップライジング』のブルーレイ&DVDは、先述のとおり10月11日(木)に発売・レンタル開始。それまで待てないという人は、9月27日から先行デジタル配信が開始されるので要チェック! 絶版ではあるが、『乱世のサバイバル教典』とセットで見ると2倍勉強になる……かもしれない!?

参考リンク:パシフィック・リム:アップライジング
Report:GO羽鳥
協力:クーロン黒沢、サージェント阪木
Photo:RocketNews24.

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