今、ある動画がネット上で大きな話題を集めている。1人の少年が「なぜみんなは僕をイジメるの?」と母親に向かって涙ながらに問いかける内容だ。「イジメになんの意味があるの?」「牛乳をかけられ、醜いと笑われた」……。

このような動画を投稿するのに、相当な勇気が必要であったことは想像に難くない。加害者に見られれば、さらに激しいイジメに遭う危険だってある。だが、それでも動画は公開され、世界は少年の味方になった。動画は広く拡散され、ネット上で彼に対する励ましの声が挙がったのだ。

・「なぜイジメるの?」と動画で問いかける少年

2017年12月8日、米テネシー州のホレス・メイナード中学校に通うキートン・ジョーンズ君の動画が公開された。動画の中で彼は母親に対して、自分が学校でイジメに遭っていると涙ながらに訴えかけた。

なんであの子たちは僕をイジメるのかな? なんの意味があるんだろう? なんで罪のない人たちに意地悪することを楽しむんだろう? そんなこと間違っているのに

そう話し始めるキートン君は、自分がどんなイジメに遭ったかを話していく。「僕の鼻をからかったんだ。ブサイクだって。あと友達がいないとも言われた」「ミルクをかけられて、ハムとパンを投げつけられた」。けれども彼は同時に、こうも主張する。

「人と違うからとイジメられるべきではない。それはその人が悪いんじゃないんだから。誰かに笑い者にされても負けないで。強くいることかな。大変だけど。いつか良くなる日がくるはず」

この動画が、彼の母親のFacebookページに投稿されたところ、爆発的な話題を集めることに。2200万回以上再生され、ネット上では「#StandWithKeaton(キートンの味方)」というハッシュタグと共に拡散。名立たる有名人も続々とキートン君へエールを送った。

・有名人らから温かいメッセージが寄せられる

ラッパーのスヌープ・ドッグさんが「私は君の生涯の友人だよ」「憎悪に打ち勝てるのは愛だけだ」などとメッセージを送れば、ジャスティン・ビーバーさんは「イジメに耐えながらも、他者への思いやりを忘れていない。これで彼がどんな人物かが分かるはずだ」と呼びかけた。

他にも映画『アベンジャーズ』に出演した俳優クリス・エヴァンスさんも、「強くいてくれ、キートン。奴らに負けるな。絶対に事態は良くなるよ」と励ましながら映画プレミアに招待。

映画『スター・ウォーズ』の俳優マーク・ハミルさんも「なんでいじめっ子が意地悪かなんて考えても時間の無駄だ。彼らは自分のことが嫌いだから、他者を傷つけて気分が良くなっているだけなんだ。悲しい人間の集まりさ」とツイートした。

またフットボールチームのテネシー・タイタンズの選手は、実際にキートン君に会いに訪れている

かつてイジメの被害者・加害者の両方を経験したことがあるというジャレット・グアランターノ選手は、「だから僕は、こういう少年を見ると胸が苦しくなる」と発言。そして「新しい親友と一緒に過ごした。(略)スゴい奴で、僕の人生を変えてしまった。ずっと欲しかった弟だ!」などとキートン君と一緒に写った写真をSNSにアップした。写真の中でキートン君は笑顔を見せている。

・キートン君の母親に対するバッシングも

しかし12月12日現在、ネット上では「キートン君の母親は人種差別主義者だ」と非難する声も聞かれている。というのも、母親のFacebookページには、南部連合旗を掲げた写真や、人種差別的な発言などが掲載されていたというからだ。現在、彼女のFacebookページは閉鎖されている。

また彼女の名で寄付が呼びかけられているとも伝えられているが、キートン君の姉だと見られる人物はTwitterで「私たちは人種差別主義者ではないし、お金を呼びかけていない」などと否定している……と、状況はなかなか混乱しているようだ。

とは言え、彼の家族がどうであったとしても、イジメが正当化されていい訳では決してない。彼の叫びは、世界中のイジメに遭っている人々の叫びであり、そして彼のもとに集まった励ましは、イジメられている全ての人々に対する励ましでもあるはずだ。

参照元:Evening StandardThe GuardianTennessee TitansChicago TribuneMail Online (英語)、Twitter @Everything_TN@Lakyn_Jones
執筆:小千谷サチ

▼キートン君の訴え